句歴30年の奥田瑛二さん「艶俳句」のススメ 寂聴さんの一言から広がったエロチシズムの世界

公開日: 更新日:

奥田瑛二さん(俳優/71歳)

 俳優の奥田瑛二さん(71)は句歴30余年の宗匠としても有名だ。その俳句人生を伺うと、エロチックな「艶俳句」を編み出していた。

「あなた、俳句はお詠みになるの?」

 瀬戸内寂聴さんを京都の寂庵にお訪ねし、ブランデーをのませてもらった上、おいしいものを食べに連れて行っていただくことになって玄関で靴を履いていると、寂聴さんはそうおっしゃいました。

「はぁ、小学校の授業で教わったことはありましたが」

「じゃあ一句お詠みなさい。詠めなければ、ここに置いていくから」

 寂庵は借景がとても奇麗で、35歳の僕が頭を抱えていると、ホーホケキョって、聞こえてきたんです。

「できた?」

「はい」

 それでようやく車に乗せてもらえ、助手席から振り向いた寂聴さんに声に出して詠むよう言われました。

「鴬の、鳴けるやさしさ、我になし」

 それが俳句との出合いです。17音という世界最小の文学、無限宇宙へと道をつけてくださった寂聴さんから、このとき「寂明」との俳号を賜りました。寂は言わずもがな、「明」は本名の豊明から取っていただきました。

 それから数十年、唯一の趣味として駄作、愚作を残し、詠んだり詠まなかったりの日々を過ごしてきたのですが、ここ数年、なぜか全く詠めなくなってしまった。俳句の番組に出演させていただいたり、選者まで仰せつかったりもするのに、これはまずい。それでどうしたらいいか考えていると、あるとき、そうかと膝を打ったのです。僕にとってもっとも慣れ親しんできたエロチシズム、男女の艶の世界を突き詰めたらどうだろうって。季語を入れるルールも、入れたくないときは入れない。もっと自由、縦横無尽にやってしまおうって。

女性には今も150%、ドキドキです

 艶俳句。これが本当に楽しい。年齢を重ねるにつれ、たくさんの思い出、経験が蓄積されますよね。恥もあれば、悔しさもあり、つらい別離もありましたけど、もう一度、戯れると、心のコアのところにしまい込んでいた思い、忘れていた場面、言葉がまざまざと思い出され、表情やにおいまでフラッシュバックする。

「青春をしまって出してまた青春」

 そんな句を詠んだことがありますが、青春を色恋と置き換えてもいい。

 僕は元来、ひとりが好きで、群れるのが嫌い。それでワインバーのカウンターの片隅でたばこをくゆらせたりするんですけど、そこで品性ある獣となって時空を超え、想像と妄想の翼を広げていく。行くたびに何か紙と書くものを女将さんに出してもらっていたら、それらを置いておいてもらえるようになりました。

 年をとれば、体力は衰えていきます。しごく自然なことですけど、僕はそれと反比例して、心の体力がついてきた。普通は体力と共に気力も落ちるのだそうで、「初めて聞きました」と医者は驚いていた。でも、本当なんです。

「鳴く鳥を抱いて殺すか人の妻」

 そんな官能的な艶俳句を詠んでいるからかもしれない。女性には今も150%、ドキドキですよ。

 もちろん、谷底に突き落とされるようなときもあります。コロナ禍でほとんどの仕事がキャンセルになり、時間が止まってしまったときは心が折れ、昼間から酒瓶に手が伸びた。とても悪い酔い方をして、しばらくしてドラマの話をいただいても、セリフが全く入らないのですから自我亡失、嫌悪に自己軽蔑。このままじゃいけない。また崖に手をかけ、登るつもりで奮闘しました。

 人生、その繰り返し。ひとつ登頂できても、また別の山が見えれば、登るしかない。98歳と決めていた自分の寿命をコロナで3年延ばして、101歳としました。最期を迎えるとき、幸せだったら右手を上げる。そう家族に伝えているのですが、そのためにも、見果てぬ夢、ロマンを追い続けたい。男が、自分ひとりで完結させるべきものがダンディズム。女は宇宙だと思う。いつか生まれてきたところに帰りたい。だからこそ、女性への憧憬の念を強く、抱き続けるのでしょうね。

 艶俳句は今のところ趣味ですが、プロになったら、寂明の俳号を名乗ります。

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