六本木歌舞伎「ハナゾチル」A.B.C-Z戸塚祥太の使い方がもったいない!

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 昨年12月にチケットが発売された時点では、海老蔵と戸塚祥太が出ることしか発表されなかった。タイトルも内容(ストーリー)も教えずにチケットを売り出したのだ。これは秘密主義というより、それしか決まっていなかったのだろう。

 発売後に「ハナゾチル」というタイトルで、「白浪五人男」をもとにした芝居だと発表されたが、このタイトルも分かりにくい。「白浪五人男」か「弁天小僧」のほうが訴求力があっただろう。

 ジャニーズを出すことに眉をひそめる歌舞伎ファンは多い。だからこそ、戸塚祥太にはもっと重要な役、難しい役を当てるべきだったのではないか。戸塚の使い方が、もったいないのだ。

 パンフレットに収録されている海老蔵と戸塚の対談によると、戸塚を五人男のひとりにという案もあったらしいが、歌舞伎独特の七五調のセリフまわしは難しいからと、海老蔵側が判断して、別の役となった。そのためか、冒頭とラストの戸塚が活躍する場面が、いかにもとってつけたよう。

 現代の青年が江戸時代にタイムリープしても、傍観者に終始するので、「白浪五人男」の世界は揺るがない。それは歌舞伎はどんな時代の変化にも動じないという主張でもあるのかもしれないが、これでは歌舞伎役者ではない俳優を起用する意味がない。

(作家・中川右介)

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