木久扇師匠に「どうしてうちに来たの?」と聞かれ「家が近いんで」と答えた

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「魔法のカード」と呼ばれたいっ平のカード

 前座名はきく兵衛。木久扇の若い頃のあだ名だったという。

「当時の前座の先輩が、にいがた(現白鳥)、かな文(現橘家文蔵)で、同期が喬太郎、入船亭扇辰と、悪いのと優秀なのが揃ってました。何もできない身としては、やっていけるかなと不安になりましたが、間もなく林家いっ平(現三平)が入ってきて、『よかった』と安心しました(笑)。こいつよりはできると、自信がついたんです」

 どんな落語家でも、前座時代は、飲みに行くにも金がない。

「前座仲間と飲んだ時、誰も金がないとわかったら、いっ平が『僕がカードで払います』と言う。当時の前座は、カードの存在すら知らない。知ってても貧乏だから作れません。そんな時、一番下の前座がカードで払った。それから仲間内で『魔法のカード』と呼ばれ、いっ平に払わせるようになった(笑)。早い話、お金持ちの坊ちゃんにたかったわけです」

 93年、入門3年半で二つ目に昇進。改名するに当たって、木久扇は彦六師匠の彦の字を付けたがったという。

「僕は大師匠の彦六に間に合ってなくて、師匠の『彦六伝』を聴いて知ったくらいでした。熊本県で語り継がれる民話に『彦一ばなし』というのがあるので、彦いちはどうかと言われました」

 彦いちの下の弟子は、たいてい「きく」か「扇」が付く名前で、「彦」は彼だけである。

「いい芸名を付けていただきました。仲間からは『彦さん』と呼ばれています」 =つづく

(聞き手・吉川潮)

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