イルカさんが初めて明かした歌う喜びの“原点”と名曲「なごり雪」秘話

公開日: 更新日:

レコーディングで伊勢正三と交わした会話

 レコーディングの日はスタッフがみんな集まっているのに、私はブスッとしていた。誰とも話したくないし、申し訳ない気持ちで押しつぶされそうになっていて。もし歌ったら取り返しがつかないことになる、逃走しようかというくらいに悩んでいましたね。でも、全部お膳立てができているから逃げるわけにもいかないし……と思っていた時に正やんがやって来まして。

 それまで正やんと話をしていなかったし、「歌っていいか」なんて口が裂けても言えない。それでどうしたものかと思っていたら、正やんが「イルカさあ、歌うかどうか悩んでいるって聞いたけど……」と言うから、「ヤダとかじゃなく、かぐや姫の歌なのに私が今さら歌うなんて申し訳ないって思うしかないんだよね」と正直に言いました。お互いに横を向いて体育座りみたいな感じで話して。

「イルカが嫌いなら仕方がないけど」「嫌いとかそういう意味で言っているわけじゃなくて」……という会話があって、一度、正やんの顔を見たかな。それから「イルカが嫌いじゃないなら、僕が作った歌を歌ってくれたらうれしい」と言ってくれたので、私は2度くらいチラ見して、「本当に? うれしいの?」って言ったら、「うれしいよ」って。その瞬間に完全に吹っ切れましたね。正やんは「誰が何を言っても気にすることない」とも言ってくれた。それから今まで本当に私の大切な曲になりました。

 私は、こういう出会いがあって50周年を超えて歌ってこられた。本当に感謝ですね。

 最近は、還暦を越えたら“デザート世代”ということで「人生フルコース」という歌をメッセージソングとして作っています。メインの料理は終わったけど、最後に来るデザートもかけがえのないもの。ただ、デザートは還暦を過ぎないといただけない。還暦を迎えますというと、後ろ向きな気持ち、マイナスな表現が多かったけど、最近はもう少しでデザート世代の仲間入りというメッセージです。これまで背負ってきた重荷を下ろして、若い頃にやりたかった好きなことをやる。そんな年になるとだいたい放っておかれるでしょ。それで自由を得られる。責任もないから好きなことをやれる。定年したらやることがなくて自分は価値がないなんて思うことはないんですよ。

 50周年を過ぎ、これからはリバースですね。オートリバース、そんな感じです。それに合わせたように80年代のシティーポップの流れがピタッと来ている。第8弾のアーカイブのアルバムをリリースしました。3枚とも80年代のものです。流れって面白いですね。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ

■イルカアーカイブvol.8「JULIA」「LOOP CHILD」「Heart Land」(3枚組)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    朝ドラ「あんぱん」豪ちゃん“復活説”の根拠 視聴者の熱烈コールと過去の人気キャラ甦り実例

  3. 3

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  4. 4

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  5. 5

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  1. 6

    「時代と寝た男」加納典明(16)小熊を屋内で放し飼い「筋肉、臭い、迫力、存在感がぜんぜん違った」

  2. 7

    長嶋一茂が晒した「長嶋家タブー」の衝撃!ミスターとの“今生の別れ”、妹・三奈との根深い確執も赤裸々

  3. 8

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 9

    手ごたえのない演奏を救ったのは山下達郎 弱冠22歳の雄叫びだった

  5. 10

    “Snow Manの頭脳”阿部亮平は都立駒場高校から“独学”で上智大理工学部へ 気象予報士にも合格

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  3. 3

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    (1)長嶋茂雄氏の「逆転巨人入り」は、銚子の料亭旅館の仲居さんの一言から始まった

  1. 6

    我が専大松戸がセンバツ王者で無敗の横浜に大金星も、達成感、喜びをあまり感じない理由

  2. 7

    永野芽郁「キャスター」“静かにフェードアウト説”一蹴!主演映画も絶好調で“稼げる女優”の底力発揮

  3. 8

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  4. 9

    長嶋茂雄さんは当然のように電車改札を「顔パス」しようとして、駅員に捕まった

  5. 10

    日本ハム最年長レジェンド宮西尚生も“完オチ”…ますます破壊力増す「新庄のDM」