寺島しのぶの歌舞伎初舞台「声のトーン」には違和感も…出演する昼の部はほぼ満席

公開日: 更新日:

 10月の歌舞伎座は昼の部はほぼ満席、夜の部はかなり空いており、客足では明暗を分けた。昼にしか出ていないのは、尾上松緑と寺島しのぶ。多分、昼は寺島しのぶを見ようという客が詰めかけたのだろう。

 寺島が演じるのは『文七元結物語』。三遊亭圓朝の人情噺『文七元結』をもとにした歌舞伎は、代々の菊五郎が演じてきたが、それを山田洋次が脚色・演出して『文七元結物語』とした。

 基本のストーリーは同じだが、かなり脚色し、キャラクターの造形も異なる。衣装は従来の歌舞伎と同じ傾向だが、舞台装置は現代演劇風に簡素というか半抽象とでもいうもの。山田洋次自身、「歌舞伎座の舞台面は横に長く、あの広さは途方に暮れます」と語っていたが、結局、あの舞台を使いこなせず、舞台の半分くらいの空間で芝居が展開するので、窮屈になった。

 寺島しのぶは、夫役の中村獅童との掛け合いでは自然なのだが、他の女形(つまり男)との会話になると、声のトーンがひとりだけ高く、目立ってしまう。だが、これは最初から分かっていることで、寺島の責任ではない。今後も、女優を出す場合、ひとりなのか、複数出したほうがいいのか、そこから考える必要があるだろう。

 獅童はまたも、博打好きな愚かな男の役。菊五郎と比べては気の毒とは思うが、単なる「バカ」にしか見えない。もっとも、そういう演技設計なら成功している。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発