著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

アルバム「TOKIO」は編曲こそ派手派手だが、身ぐるみを剥がすと70年代が現れる

公開日: 更新日:

 しかし、である。残念なのは楽曲そのものの70年代性、ひいてはオールドウェーブ性が、アルバムの印象を曖昧にしてしまうことだ。もちろん、その背景にはすでにご紹介したように、沢田研二自身の感性がまだ、ニューウェーブに追い付いていなかったこともあろう。

 ニューウェーブにずぬけているのは、楽曲「TOKIO」ぐらい。あとの曲は後藤次利の編曲こそ派手派手だが、その身ぐるみを剥がすと、もろ70年代の沢田研二が現れてくる。糸井重里と後藤次利に加え、康珍化のニューウェーブ勢は、阿久悠、大野克夫、井上堯之、喜多條忠、りりィというオールドウェーブ勢に押しやられる。

「TOKIO」に加え、糸井重里の、もう1曲の作詞作品は「MITSUKO」。ローマ字タイトルは共通だが、さすがの糸井重里も「ミツコ」という昔の女にウジウジする70年代の世界観に引き戻されるような歌詞世界となっている。

 あと、やっぱり沢田研二の歌がうますぎる。ニューウェーブたるもの、もっと「ヘタウマ」(当時はやった言葉)でなければならない。

 要するにアルバム「TOKIO」は、まさに「70年代と80年代のはざまの作品」だったといえる。

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