映画「爆弾」の原作者・呉勝浩さん 2つのターニングポイント…「江戸川乱歩賞」受賞と「大藪春彦賞」落選

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「俺は消えなくていいんだ」と思った大藪春彦賞候補作「ロスト」

 ふたつ目は、デビュー2作目の「ロスト」(15年)が大藪春彦賞の候補になったこと。結果的には3作目の「白い衝動」(17年)で受賞するんですが、候補になったことが大きかったんです。僕は書いてすぐ一発デビューするような才能あふれるタイプではなく、何度も応募を続け、がむしゃらに書いてきたんです。だから、簡単に受け入れてもらえるとは思っていませんでしたが、その予想よりもデビュー作はかなり批判があり、セールス的には厳しくて「生き残るのは大変そうだな」と痛感していました。

「低くなった期待値を早く回復しないと今後はかなりしんどくなる」と思い、編集者と相談して「次作を早めに出そう」となったんです。「ロスト」は乱歩賞をとる前に書いておいたので、同年の12月には出版できました。しかし、評判はまたも芳しくなかった。「あちゃー」という感じですよ。続いて短編集も出しましたが、火がつくわけでもなかった。その時点で「僕はもう終わるんだ」と覚悟しました。次の小説が最後の本だろうと。それで「白い衝動」という作品を書き上げた頃、「ロスト」が大藪賞候補になったんです。

 ここは、僕が作家として生き残れたターニングポイント。結果的に受賞はしないんですが、プロ作家の文学賞の最終候補になったことで「俺はまだ消えなくていいんだ」と思えました。プロ作家の賞って、世間一般の人は直木賞、芥川賞は知っていても、他の賞はあまり知らないと思います。でも、業界の人はチェックして「候補になるなら将来すごいものを書くかもしれないから、こいつに書かせてみるか」と編集に思ってもらえましたから。正直「助かった」と思いましたよ。

 発表の日は講談社にいたんです。何かの作業をしていましたが、出版社にいればもし受賞した時にすぐ対応できますしね。電話がかかり「今回は残念ですが」と落選を告げられました。その直後、別室から「やったー!」と大声が響いてきて。一緒に候補になっていた長浦京さんの編集さんたちが受賞して大喜びしているんですよ。長浦さんも候補作が講談社から出されていて。同じ出版社の近くの部屋で明暗が分かれた瞬間です。

 まあ、賞にはいろんなエピソードがありますね。翌年に受賞するより、候補になった年の方が作家生命が延びたという点で大きかったのは確かです。今までやってこられたのも大藪賞のおかげです。

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