心を癒やす舌の愉悦!文庫で読むお菓子の本特集
「うさぎ玉ほろほろ」西條奈加著
主食ではないが、食べると心がほんわかする。そんなお菓子が生まれたいきさつや、作る人が込めた思いなどに目を向けた作品を読んでみよう。
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「うさぎ玉ほろほろ」西條奈加著
麹町の菓子屋、南星屋の店先で、何やらもめている。親方の治兵衛が孫のお君に声をかけると、小さな女の子が、お君の母に三くだり半を書いてほしいとごねているという。母は9年前に離縁しているのに。
治兵衛はその子に作ったばかりの「うさぎ玉」を「味見してくんな」と差し出した。「うさぎ玉」は仙台の菓子で、香煎粉に餡と砂糖、黒糖を練り込み、丸めて砂糖衣を付けたものだ。口に入れると子どもの頬がゆるんだ。
「かや」という名のその子は、お君の父・修蔵に自分の父親になってほしいと言う。左官職人の修蔵が鼻緒師であるかやの母が作る鼻緒に惚れ込んで、何くれと世話をしているらしい。母が病気になって心細くなったかやは、父親が欲しくなったのだ。
親子の絆などをこまやかに描く人情時代小説。 (講談社 748円)
「和カフェこよみ」野村美月著
「和カフェこよみ」野村美月著
「ましろ」は人気モデルだが実は性格が暗くて、3回のひきこもりからなんとか復帰した。仕事に疲れ、目黒川沿いの小道を歩いていて、「和処こよみ」というカフェに入った。大学院生の五月がやっている、居心地のいい店だった。
ひな祭りが近い頃、「こよみ」でちらし寿司を食べたら、扇形のプレートにのった変わったデザートが出てきた。ピンクの柄杓に白い玉がのっている。あこや貝をイメージしたひな祭りの菓子だと、五月が説明してくれた。「ましろ」の名前は「真珠」と書くと聞いて作ったと言う。実は「真珠」と書いて「スピカ」と読むのだが、本人はこの名前が嫌いだった。だが「あこや」を食べると、よく知っている味のような気がして懐かしかった。
疲れた心を癒やしてくれるカフェの物語。書き下ろし。 (徳間書店 836円)
「夜パフェ王子のパルフェな謎解き」鳩見すた著
「夜パフェ王子のパルフェな謎解き」鳩見すた著
イギリス人の母をもつフィリップ・アップルトン(フィル)は21歳。ずっと日本で暮らしている。
友人のカイリと始めた夜パフェ専門店「ムーンシャイン」に、ある日、咲良という女性がやってきた。メニューを見て迷っているので低カロリーのゼリーをすすめたら、「カロリーはむしろ欲しいです。胃が完全にからっぽなので」と言う。そこですすめたのが季節限定の「桜パフェ」。桜のホイップクリームとストロベリーのアイスクリームにチェリーのコンポートやリンゴのジュレが入っている。
フィルが「友だちも連れてきて」と言ったら、咲良の顔色が変わった。人間関係に問題を抱えているのでは? 聞いてみると、友人の梨里愛が同級生の木宇井につらく当たると打ち明けた。カイリのアドバイスで、咲良が木宇井に話しかけると……。
パフェの店長とパティシエが客の持ち込む謎を解く。 (光文社 770円)
「りんご蜜飴」篠綾子著
「りんご蜜飴」篠綾子著
東西の菓子職人の競い合いを描く時代小説。
上落合の泰雲寺の娘、なつめは、内藤宿で菓子茶店うさぎ屋を営んでいる。7月15日の夕方、寺に戻ると京菓子屋果林堂の店主、柚木九平治が来ていた。甲府から届いたリンゴをお裾分けしたら、お礼に来たのだ。
果林堂は江戸店を出すことになったのだが、九平治は甲府の宰相、徳川綱豊に仕えているので、甲州産の果物を使った菓子を江戸店の柱としたいと言う。
ある日、うさぎ屋に高遠藩内藤家の中間、友吉が、使ってほしいと葉生姜をもってきた。病気で寝込んだ時はすりおろしリンゴを食べたり、生姜湯を飲んだりする。リンゴと生姜を一緒に使ったら……。
なつめはリンゴを櫛切りにして串に刺し、生姜入りの蜜をからめた。冷えると透き通った飴がリンゴを包んできらきら輝く。 (角川春樹事務所 792円)



















