著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

テレビ東京「コーチ」は62歳という年齢を味方につけた唐沢寿明の新境地

公開日: 更新日:

 今期ドラマにおける思わぬ佳作かもしれない。唐沢寿明主演「コーチ」(テレビ東京系)だ。

 主人公の向井光太郎(唐沢)は警視庁人事2課所属の熟年職員。元々は捜査1課で活躍していたが、なぜか外された。背後には捜査1課の相良課長(古田新太)との隠れた確執があるようだ。

 そんな向井が都内各署の若手刑事をコーチングして歩く。たとえば、目黒北署の西条(関口メンディー)は偉丈夫だが目立つ。だから尾行や張り込みが苦手だ。対象者に刑事だと知られて落ち込む西条に、向井は「バレているなりのやり方」があると気づかせる。

 また「泣き虫刑事」と呼ばれるのが板橋中央署の正木(阿久津仁愛)だ。感情の起伏が激しく、自分でもコントロールができない。向井はその欠点を「特性として利用する」ことを教える。

 毎回、向井コーチに刺激されて成長する彼らと、捜査の進展がリンクしていく。第5話では、教えを受けた面々が捜査1課に異動。4係主任の益山(倉科カナ)をリーダーとするチームができた。益山もまた「向井チルドレン」の一人だ。

 白髪頭に白ヒゲの唐沢は、今年1月期の「プライベートバンカー」(テレビ朝日系)に続くハマリ役だ。隠者のごとくひょうひょうと若者たちに向き合うが、事件の核心部分は決して見落とさない。62歳という年齢を味方につけた唐沢の「新境地」と言えそうだ。

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