『ビートルズ・フォー・セール』これまでの本質からズレを感じる「大安売り」
アルバム『ビートルズ・フォー・セール』(1964年12月04日発売)①
冒頭からゴーマンかますと、今回から取り上げる『ビートルズ・フォー・セール』は、本連載で取り上げる全オリジナルアルバムの中では、もっとも聴き応えに乏しい作品である。
もちろん天下のビートルズなので「駄作」とはいえないものの、何というか「脱力作」という感じに聴こえてくるのだ。
前作『ハード・デイズ・ナイト』は全曲「レノン=マッカートニー」作品だったのに、ここではカバーが6曲もある。
そして、また俗な物言いになるが、印象が「白っぽい」のだ。これまでは「アメリカ黒人音楽の白人的・イギリス的解釈」がビートルズの本質を成していたが、この『フォー・セール』、特に後半(LP時代のB面)は、バディ・ホリーやカール・パーキンスなど、ポップ/カントリー風味のカバーが台頭。
いや別に「白っぽい」ことが悪いわけではないのだが、これまでの本質から少しばかりのズレを感じるのも事実なのだ。
しかしA面では逆に、この時期のアメリカで、ビートルズとともに60年代音楽シーンのキーパーソンとなる、ある白人音楽家からの影響も垣間見える──ボブ・ディランである。
で、なぜこんな「脱力作」になったかというと、1964年のクリスマス商戦に急いで間に合わせるという意図が働いたから。アメリカでも人気沸騰。とにかく年末までに早く作ろう・作っちゃおう! そんなもくろみはアルバムのタイトルにも表れている「ビートルズ大安売り」!
白人・黒人の話が出たので、最後に脱力しない話を。
この年の9月、アメリカ・フィラデルフィアで行われたビートルズのコンサートの客が、すべて白人客だったという。公民権運動吹き荒れるアメリカで、である。
で、運動を支持していたビートルズは、9月6日の新聞に「黒人がどの席でも自由に座れるようにならないかぎり、僕らは出演しない」という声明を出す。
多くのマスコミはこの声明を強く批判したというが、逆にある音楽家が、声明を支持する。黒人音楽レーベル・モータウンのリーダー的存在で、ビートルズも憧れたスモーキー・ロビンソンだ。
彼いわく「ビートルズは、ブラック・ミュージックを聴いて育ったことを初めて認めた白人アーティストだった」。
60年代中期のアメリカの音楽シーンが、ビートルズとボブ・ディラン、モータウンが混ざり合った色、いや音に染まっていく。
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