西武は渋谷店閉店、池袋本店はヨドバシカメラに…海外ブランドに振り回される国内百貨店の実態

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 東京・渋谷の顔ともいわれた「西武渋谷店」が9月30日に閉店することが決定し、1968年の開業以来、58年の歴史に幕を下ろす。店舗のショーウインドーでは、「THE LAST 9.30 WED ありがとう、渋谷。」と記されたパネルが設置され、閉店までのカウントダウンが始まった。

 公式の発表では、土地の賃貸契約などの更新が閉店の理由とされているが、実情は長年入店していたエルメスをはじめ、主要なブランドが撤退し、売り上げが急激に減少したことも影響しているといわれている。

 その一方で、6月30日には「西武池袋本店」の建物が全面改装され、「ヨドバシカメラ マルチメディア池袋」がオープン。ヨドバシの店舗は都内最大級の規模となる一方、百貨店のフロアは大幅に縮小された。歴史的な株高で富裕層が次々生まれるなかで、迷走する百貨店。その現状を取材した。

■上の階に行くほど閑古鳥が鳴く

 実際に西武渋谷店に行ってみると、その寂しさがよく分かる。渋谷の一等地にある店舗とは思えないほど閑散としていて、昨今SNSで話題になっている地方の“廃墟モール”に近いものになってしまっている。隣接する「SHIBUYA TSUTAYA」が連日のように混雑しているのを見ると、対照的である。

 建物の老朽化が進んでおり、外壁の汚れも目立つ。閉店が発表される前から、上の階に行くほど閑古鳥が鳴いている状態だったが、現在は空きスペースが広がり、ガラガラ。副都心線で結ばれている伊勢丹や高島屋ほどの活気がないのだ。

 ルイ・ヴィトンこそ健在であるものの、かつてはB館1階にあったエルメスやカルティエをはじめ、高級ブランドの多くが撤退した。景気が良かったころは高級腕時計を扱うフロアも存在し、現在のZOZOを創業した前澤勇作氏などが愛用する定価1000万円超えもザラの高級腕時計、リシャール・ミルなどを取り扱っていたのだが、既になくなっている。

 宝飾品や美術品などを扱うB館8階の中央部分にはテーブルと椅子が置かれ、休憩スペースになっていた。筆者はテーブルで10分ほど休憩していたが、その間、誰もこのフロアに来なかった。目の前に外商カードを持っている客用のラウンジがあるフロアなのに、である。閉店発表前から百貨店としての集客力が落ちていたとみるべきだろう。

バブル期以降、百貨店の性質が激変

 かつて、百貨店は家族でハレの日に出かける場所で、流行の発信基地であった。バブル期の西武百貨店といえば、渋谷も、池袋も、名だたるファッションブランドを抱え、若者が集まる場所になっていた。しかし、バブル崩壊後に百貨店の様相は様変わりした。過度な高価格路線を推し進め、海外ブランドにフロアのスペースを貸す、いわばテナントビジネスに舵を切る店が続出した。

 その結果、百貨店が独自にブランドを発掘し、育て、売るのではなく、完全にブランドの知名度と人気頼みで集客するスタイルに変貌してしまった。高級化を図れば図るほど、百貨店ごとの個性や独自性が薄れてしまい、どの百貨店も同じブランドが入居する状況になっていた。

 実際、高級腕時計や海外ブランドを扱うフロアに行ってみればわかる。どこの百貨店でも同じ什器に同じ品物が並ぶ空間になっている。いわば高級なチェーン店で、「どこの百貨店で買っても同じ」状況が生まれてしまった。これこそが、株高で富裕層の利益が上がっているにもかかわらず、百貨店の閉店が相次ぐ要因だろう。

 極端な富裕層頼みになっているのも問題だ。ある百貨店は外商が圧倒的に強く、過去最高レベルの売上を叩き出していると聞くと聞こえはいい。しかし、富裕層に依存しすぎると、ひとたび金融危機などに見舞われると、屋台骨が傾くリスクをはらんでいる。百貨店の経営は決して安泰ではなく、綱渡りが続いているとみていい。

海外ブランドに忖度する状況に

 西武池袋店が衰退したのは、海外ブランドが撤退したことと無縁ではないだろう。特にエルメスは、西武から撤退した一方で、表参道に路面店をオープン。高級ブランドほど、百貨店ではなく担当者に顧客がつく形になっている。これまで西武で買い物をしていた相当な顧客が、そのエルメスの路面店に流れてしまったのではないかと考えられる。

 このように海外ブランドの存在が、百貨店の業績を大きく左右する。特に地方の百貨店は、海外ブランドがあるかどうかが都心以上に集客に直結するとされ、撤退は死活問題になる。福島の「うすい百貨店」、茨城の「水戸京成百貨店」は、ルイ・ヴィトンの撤退が大幅な集客減につながったとされる。

 百貨店側も海外ブランドに出て行って欲しくないため、ブランド側に忖度するようになっているという。知人の不動産会社関係者は、海外ブランドの高級腕時計をある百貨店で数百万円で購入した。ところが、購入後、腕時計の内部に傷があることが見つかり、交換を申し出たが、ブランド側は拒否。百貨店もそういった仕様なので、と対応をしてくれなかったという。

 百貨店が、顧客の利益よりも、テナント料を払う海外ブランドの利益を重視するようになってきているのは、いびつな状況だ。そんな現状を招いたのは、海外ブランドよりも集客力をもつ国産ブランドが存在しないためでもあるといえる。百貨店の復活は、国産ブランドの奮起にかかっているのかもしれない。

(取材・文=宮原多可志)

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 閉店が相次ぐ百貨店やショッピングモールについては、関連記事【もっと読む】【さらに読む】などでも詳しく報じている。

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