著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

32歳での夭折がなければ8年目の解散は回避可能だった

公開日: 更新日:

特別編「5人目のビートルズ~ブライアン・エプスタイン」②

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 ビートルズを世界的音楽家に育て上げたキーパーソン、マネジャーのブライアン・エプスタインが亡くなったのは1967年8月27日のこと。32歳の若さだった。

 自殺説も流れたが、死因は薬物の過剰摂取とされている。また、その死には、自らが取り仕切っていたコンサートツアーをメンバーが拒否し、レコーディング活動に専念するという決断が大きく影響したといわれる。

 コンサートという絆を断たれ、手塩にかけたメンバーとの距離が広がっていく悲しみは、いかほどのものだったか。

↓………ここから続き………

 昨年公開の映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』のラストシーンの舞台は、ブライアンの亡くなる約2カ月前、全世界に衛星生中継された『アワ・ワールド』のスタジオ。

 よく知られているように、この世界初の多元衛星中継において、ビートルズはイギリスの代表として出演し、『愛こそはすべて』を歌うのだが。

 歌う直前にメンバーがブライアンを呼び寄せて5人で肩を組む。ブライアンが「君たちは唯一無二だ」と言うと、ジョンが「それは君だ」と返す。そしてポールによる言葉がテロップに出る──「ブライアンは5人目のビートルズだ」。

 こうして「5人目」を失ったビートルズは、まるで船頭をなくしたように、方向を見失い、収拾のつかない状態になっていく。70年、デビューからたった8年目での解散なんて、なかったかもしれないのだ。もしブライアンがその後も生きていたとしたら──。

 さて最後に、ブライアンに関する小ネタ。来日公演への歩みを克明に描いた佐藤剛『ウェルカム!ビートルズ』(リットーミュージック)という本に、プロモーター・永島達司とブライアンが来日公演の料金を折衝する場面がある。

「コンサート会場は武道館、入場料は1人10ドル(当時3600円)」を提案する永島達司に、ブライアンは「1人6ドル以下の入場料にしたい」と申し出る。6ドル=2160円になるので、永島が10円以下を切り上げ「1人2200円にしましょう」と返すと、「いや、2100円だ」とブライアンが返したのだという。

 かくしてビートルズ来日公演は、高くない料金設定も影響して、あれほどまでに多くの若者で埋め尽くされ、その後の日本の音楽シーンに大きな影響を与えていく。

 ブライアンの地味ながら、とても大きな偉業ではないかと思うのだが、どうだろう。

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【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

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