「タンゴの後で」あの衝撃作でトラウマを抱えた女優マリア・シュナイダーの絶望を描く

公開日: 更新日:

 ベルトルッチ監督はよりインパクトの強い性愛場面を撮るため、脚本にない演出を現場でプラスした。マーロン・ブランドがマリアの肛門にバターを塗ってペニスを挿入するシーンだ。マーロンに組みしかれて泣きじゃくるマリアの声と表情は迫真の演技として日本でも話題になった。それもそのはず、彼女は事前に詳しい撮影内容を聞かされておらず、いきなりアナルセックスに引き込まれたため本物の涙を流したのだ。

 ただ、ポルノ映画のように実際にペニスを挿入したわけではない。うつぶせに寝かされたマリアのジーパンをマーロンが下ろしてその上に覆いかぶさり、肛門挿入を演じただけだった。

 だがマリアは強烈なショックを受け、メディアを通じて被害を訴えた。さらに不幸なことに、宗教的に厳格なイタリア社会ではこのアナルセックス場面は受け入れられず、マリアとマーロン、ベルトルッチ監督の3者は裁判で裁かれることに。その結果、マリアは執行猶予付きの懲役2月の判決を受けてしまった。まさに踏んだり蹴ったりである。

 残酷なことにイタリア国民はマリアを「女の恥さらし」と罵った。ショックが二重三重となり、マリアはトラウマを抱えながら、違法薬物のヘロインに溺れていくのだ。こうした事実は日本でも断片的に報じられたが、この「タンゴの後で」を見ると、彼女の精神状態がいかに絶望的だったかを実感できる。アナマリア・ヴァルトロメイは「バター事件」を含め、まるでマリアが乗り移ったような演技を披露した。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」