著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(34)箱根湯本で蕎麦屋酒

公開日: 更新日:

 ああ、温泉でのんびりしたいな。と、ときどき思う。できれば長逗留をしたいと思う。以前、イラストレーターの安西水丸さんと酒場で話していたとき、昔の文豪が温泉に逗留して執筆していたのを現代でも実践できないか、という話で盛り上がったことがある。いや、正確には、今そんなことをしたら、宿代の支払いが心配で、せいぜい3日で帰ってくるだろうと、会話は急にしぼんでしまったのだった。

 たとえば箱根。文豪ゆかりの宿に逗留など望むべくもない。しかし、箱根に湯は湧いているのであって、街の銭湯と変わらぬ料金で入ることのできる共同湯もある。伊東や草津でそんな共同湯を覚えた私が箱根湯本でも同じ楽しみを知ったのは、もう50代になる頃だった。10年以上前のことになる。

 その日の私は小田急箱根鉄道の風祭という駅から散歩を始めた。国道1号をしばらく歩き、橋を渡ると旧東海道に入った。昔の人がここを歩いて箱根を越えて、西へ旅をしたという道が残っている。

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