(34)箱根湯本で蕎麦屋酒
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北条家ゆかりの早雲寺を過ぎると、右手に小さな共同湯がある。弥坂湯という。当時の入湯料がいくらだったか忘れたが、500円したか、しなかったか。当時の私は盛んに散歩酒をしていたから、タオルや石鹸など、最低限の入湯セットは持ち歩いていた。ついでに言うと、リュックの中にいつもあったものとしては、角のポケット瓶があった。
丸い浴槽に浸かった。ほかにお客さんはいない平日の昼下がり。かすかに硫黄の匂いがするきれいな湯が、ちろちろと注がれている。ほかに音もなし。なんという贅沢な時間だろう。
文豪ゆかりの宿も行ってみたいが、オレはここがいいや。森と清流と、気持ちのいい湯。それが箱根だ。その湯に浸かる。いいねえ、実に、いい。
他のお客さんが来ないので、私はじっくりたっぷり、箱根の湯を堪能した。
















