「ヘンリー・ダーガー非現実を生きる」小出由紀子編著
物語の主人公はキリスト教の国のひとつ、アビアニア王国のプリンセス7人姉妹ヴィヴィアン・ガールズ。拾ってきた雑誌から切り抜いた写真などをコラージュしたその絵は、まさにポップアートの先駆ともいえる。ペニスをもった少女や、窮地に陥った主人公たちを救出する人間の頭に大きな羊の角が生えた怪獣などが描かれたその奇矯ともいえる作品からは、脳内にあふれ出たイメージをひたすらに具象化するひたむきさと純粋さが伝わってくる。それらは精肉店で肉を包むために使われる薄い紙に描かれているという。
繰り返し描かれる少女たちの絵は、生き別れた妹の面影を探しているかのようだ。読者は孤独な人生が生涯をかけて構築した幻想の「王国」に迷い込み、ただただ圧倒されるに違いない。
(平凡社 1900円)