「戦国の教科書」 天野純希・今村翔吾・木下昌輝・澤田瞳子・武川佑・矢野隆著、解説・ブックガイド:末國善己/講談社(選者:中川淳一郎)
歴史小説の楽しみ方をこの年で初めて知った喜び
「戦国の教科書」 天野純希・今村翔吾・木下昌輝・澤田瞳子・武川佑・矢野隆著、解説・ブックガイド:末國善己/講談社
6人の歴史小説作家が授業形式を用い、戦国時代をより深く理解するための短編を紡いでいく。各短編には主人公がいるが、以下の通りである。「下剋上・軍師(黒田官兵衛)」「合戦の作法(前田利家)」「海賊(大内義隆の家臣の息子・新五郎)」「戦国大名と家臣(上杉家の家臣)」「宗教・文化(豊臣秀吉の天下統一後の宗教関係者)」「武将の死に様(松永久秀)」。
この短編集があったうえで、文芸評論家・末國氏によるとにかく歴史の面白さをちりばめた解説と、関連した書籍の紹介が続く。
私自身、なぜこの本を選んだのかは正直分からなかった。書店で見かけたただの直感だったのだが、この本を読んで良かったことがある。歴史小説というものが、先人の考察や学者の研究をベースに作家のクリエーティビティーをまぶしたものであるということを理解できたのだ。
それが「教科書」というタイトルに込められた意図であり、「1限目」などの章立てにつながっているのだ。正直、歴史小説はとある分野で誰か一人を読んでおくだけでいい、という考えがあった。
私の場合、戦国・幕末については司馬遼太郎。三国志・前漢成立については吉川英治である。極端なのは分かっているが、北方謙三の三国志を読んだ時は「なんで張衛がこんなに重要な役割なんだ?」と思ったし、呂布が美化され過ぎているように感じ、途中で読むのをやめた。
だが、本書は6人の歴史小説作家の短編を読むことができる。そこに末國氏の解説が加わり、「歴史小説というものは多様な作家の本を読むと楽しいのだな」ということを人生52年にして初めて理解したのである。松永久秀については「梟雄」という残忍な悪人、といったイメージしかなかったのだが、こうした記述を見ると、多面的に歴史を理解する必要性を感じる。
〈信長は己が所有している天下の名物、平蜘蛛の茶釜を差し出せば降伏を許すと申し出てきている。だが久秀はそれに対し、--平蜘蛛の釜と我らの頸は、粉々に打ち壊すことに致す。とすでに返答してあった〉
歴史小説にはどこか違和感が常にあった。「それはあなたの解釈であり、実像よりも美化や鬼神化していませんか?」と。だが、本書の6人の作家の短編と解説を読むと「それはそれ」というスッキリした気持ちになれるのである。今後の人生で歴史小説を読む楽しみができた。
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