シリア難民が急増した町でパブの店主が立ち上がる
「オールド・オーク」
来週末、イギリスにまつわる対照的なドキュメンタリーと劇映画がたまたま同日に封切られる。「ツイッギー」と「オールド・オーク」の2作だ。
前者は60年代のアイコンとして知られるファッションモデルの半生記。後者は今年90歳になる英国きっての左派映画人ケン・ローチが「最後の作品」と語る、寂れた炭鉱町の人種排斥の話である。
60年代のイギリスと聞いて「スウィンギング・ロンドン」を思い出すのはいまや高齢世代だが、ツイッギーは別格。ビートルズには無縁のKポップ女子にも下まつげを誇張したあの顔は抜群の人気だ。ロンドンの下町娘で、「背も低いし、痩せすぎ」といわれた彼女が一躍世界に知られるまでとその後を描く標準的な人物伝だが、その後が知られてない日本では手ごろだろう。アメリカで毎週ゲストと歌い踊る自分の番組まで持っていたとは筆者も知らなかった。
「オールド・オーク」は炭鉱の閉山と人口減少で寂れた英北部の町のパブが舞台。急増したシリア難民への常連客の悪態を黙って聞き流す中年の店主。しかし写真家を志すシリア娘との奇縁で、苦境に立つイギリスの労働者階級と故国を追われたシリア難民の「連帯」に立ち上がる。
話だけなら左翼好みのおセンチ物語に思われそうだが、出演者を素人から選ぶローチの技は今回も健在。ツイッギーのように労働者階級の「外」に脱出できない人々の屈託した心情と、安易な解決を避けながらも希望の残る終幕への導き方に「怒れる若者」世代の気骨と誠実がにじむ。
小関隆著「イギリス1960年代」(中央公論新社 946円)は階級の壁を越えたかに見えた「スウィンギング・ロンドン」と、その陰で進む庶民階級の反発感情の双方に光を当てる。特に第5章「モラリズムの逆襲」と次章には今日の日本にも通じる反動と分断の不気味な道程が見える。
〈生井英考〉



















