皿書店(豪徳寺)「開高健も書いているし、食の本の店にしよう。そんな感じで」1年前にオープン
店頭で、クスッと笑った。SAPPOROと書いた、飲食店に置くタイプの冷蔵庫があり、その中に本が詰まっていたからだ。店内に入っても、2段の小さな冷蔵庫あり。そちらには絵本が潜んでいるもよう。面白い!
と、足が止まってしまったが、平台には、表紙が黄色い「アジア怪食紀行」、オレンジの「カンボジアは誘う」、その向こうには個性的なイラストの「ウナギのふしぎ」「サバの文化誌」が。ビジュアルまですてきな「食」の本が、軽やかに並ぶ古書店だ。
「レンタルビデオ店とかフリーマーケットとか、たくさんの物に囲まれる空間がもともと好きだったんです」と店主・関秀一郎さん。
よく読んできた開高健の本を置く店を。コンセプトほしいな。開高健も書いているし、食の本の店にしよう──。「大した理由なく、そんな感じで」と、おっとりとおっしゃるが、十分に「大した理由」だ。元会社員の28歳。オープンして1年になる。
7坪の店内に洋書からムックまで約2000冊、冷蔵庫にも本!
7坪の店内に約2000冊。洋書もずらり。アジアの棚があるかと思えば、米ニューイングランドの資料がかたまった棚も。一方、農文協の県別「聞き書 ○○の食事」シリーズが揃っていたり、暮しの手帖社の「すてきなあなたに」シリーズや「吉兆味ばなし」に目がいったり。一回りして、レシピ本より食文化本寄りですね? と言うと、「はい。この場所は、物件ありきで決めたんですが、来てみたら周囲に作家さんや研究者、海外赴任経験者らが多くお住まいだったので」と関さん。そうした人たちがふらりと来店。買い取りを頼まれると、なかなかなコレクションが混ざっていたりする。
「お客さんに恵まれて、店の雰囲気ができてきたと思います」
関さんが、「これも買い取りでした」と、「週刊朝日百科 世界の食べもの」をどんどん出してくれた。1980年代初頭に刊行されたシリーズで、欧米、アフリカ、中国、アジア……と、世界各地の郷土料理を現地取材で紹介している。
「取材費をバンバン使えた時代のムックって感じがしますね」と私。写真はすべて撮り下ろし。編集委員に石毛直道、奥村彪生、団伊玖磨、辻静雄らそうそうたる人たちが名を連ねている。
ほかにも開高健が編集発行人だった、株式会社壽屋(現在のサントリー)広報誌の「洋酒天国」、この店で冷蔵庫を本棚としたきっかけだったという写真集「冷蔵庫」(潮田登久子)もじっくり拝見。売値は、全てネット価格より安い。気がつけば2時間経っていた。
◆世田谷区赤堤2-2-8 第13通南ビル102/小田急線豪徳寺駅から徒歩8分/平日午後2~7時、土日祝日午後1~7時、木曜休み
ウチの推し本
「THE LONDON BOOK of MENUS」
「1976年が初版で、これは2刷。ロンドンの素晴らしいレストラン約160店のメニューが載った、真っ赤なハードカバーの大型本です。写真はなく、ただただ料理の名前が並んでいるのですが、文字のフォントといい、配列やデザインといい、文字を囲む花柄といい、すごく洒落ているんです。ご近所のお宅からの買い取りに含まれていました。デザイナーさん、どうぞー」
(古本売値 7200円)
■本コラム待望の書籍化!「本屋百景 独立系書籍をめぐりめぐる」好評発売中!



















