「MAGIC HOUR 嶋田里英作品集」嶋田里英著

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「MAGIC HOUR 嶋田里英作品集」嶋田里英著

 イラストレーターの著者は、趣味でもある日課の散歩中に「自分の心がほどける場所」を探し続けているという。そうして見つけたさまざまな景色をイラストで再現した作品集。

 日の出前や日没後、空が得も言われぬ表情を見せるマジックアワーに遭遇すると、その瞬間は時間が止まったように感じられる。そんな「ふと心がほどける瞬間」を見つめ直すために、マジックアワーをテーマに作品をまとめたそうだ。

 都会の生活の中で見つけた、そんな記憶に残る景色が作品に昇華され並ぶ。

「Mirror Walk」と題する第1章では、ガラスや水面に映る街のもうひとつの風景を描き出す。

「空中庭園展望台」という作品では、高層ビルの屋上に設けられた空中庭園を散策する人の足が柵の合間からのぞいている。その下は、ビルの壁がガラス面となっており、庭園の反対側で空を見上げる人や構造物が反射し、まるで鏡の迷路に迷い込んだような景色を作り出している。

 鏡に映る人が見上げる空は、ほんのりとオレンジに染まり、マジックアワーの到来を予見させる。

 神田川に架かる浅草橋を描いた作品では、川沿いに並ぶビルに反射した夕日が、揺れる川面にステンドグラスのような輝きをもたらしている。

「Untitled」、つまり無題のこの作品がなぜ浅草橋を描いたものだとわかるのか。

 その秘密は各作品にデザインのように描き込まれた数列にある。数列は、作品の舞台となる場所の座標(緯度と経度)で、その数値をグーグルマップに打ち込めば、読者も瞬時にその場所に赴くことができるという仕掛けだ。

 その数列によると空中庭園は大阪の「梅田スカイビル」のようだ。

 続く「All Aboard」の章では、飛行場や電車、機内の窓から見える風景など、「旅立ちのワクワク、帰路につく安堵。乗り物の発着、その周囲に流れる空気と気配」を描く。

 その中の「帰り路」という作品では画面いっぱいに東京駅の前にある丸ビルの側面が描かれる。大小に規則正しく並んだ窓の一枚一枚がまるでモザイク加工のように周囲の景色を映し出す中、そのオレンジ色の空を飛行機が1機どこかに向かって飛んでおり、旅の余韻を伝える。

 以降、著者の「心をほどかした」景色がテーマ別に端正で美しい作品となって紹介される。

 渋谷のスクランブル交差点や、青山通りの並木の紅葉など、見慣れた光景も著者の手にかかると印象が違ったすてきな風景に変わる。

 見過ごしているだけで、私たちの身近な風景の中にも自分だけの「心ほどける場所」がきっとあるに違いない。

(グラフィック社 2750円)

【連載】GRAPHIC

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