「奇跡の醤」竹内早希子著
2011年3月11日、陸前高田の老舗醤油蔵八木澤商店九代目・河野通洋は、避難した高台の神社から倉庫が津波で崩れるのを見た。調達した原料を運び入れたばかりだった。醤油屋の命であるもろみも蔵も失い、工場再建には億単位の借金が必要だ。絶望する父に通洋は「小さくてもいいから、醤油屋で復活する」と宣言する。だが、岩手県産の丸大豆、国産小麦を使い、伝統的な製法で自慢の〈生揚醤油〉を造ろうにも、もろみがなくてはどうしようもない。そんなとき、北里大学の研究所に保管されていた試験管1本分のもろみが見つかった。
被災した醤油蔵の再生のドキュメント。(祥伝社 1700円+税)