「増補 へんな毒 すごい毒」田中真知著
砂糖も塩も、身の回りに存在するあらゆる物質は毒になりうる。トリカブトが漢方では強心や利尿作用を持つ薬として用いられるように、毒か薬かの違いは、物質の性質の問題ではなく、人間側の用い方の問題であるという。そんな奥深く、複雑な毒の世界を案内するサイエンスエッセー。
一口に毒といっても、トリカブトのような植物由来から、毒蛇などの動物由来、細菌やウイルスなどの微生物由来、鉛や水銀などの鉱物に含まれるものと、その種類はさまざま。こうした天然毒の他に、青酸カリなど人間が化学的に合成した人工毒もある。そんな基礎知識から、悪性脳腫瘍の薬として期待が集まるサソリ毒など、それぞれの毒の特徴などを解説した知的好奇心をくすぐる刺激的な書。(筑摩書房 840円+税)