「世界海賊版マンガ大全」大江・留・丈二著

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「世界海賊版マンガ大全」大江・留・丈二著

 日本のアニメやマンガは世界を席巻し、いまやコンテンツ産業の海外売り上げは、約5.8兆円(2023年度)におよび、半導体や鉄鋼産業の輸出額を上回る規模にまで成長している。周知のように、その陰で、長年、多くの海賊版が出回ってきた。

 本書は、なんと、世界各地で制作され出回ってきたその海賊版マンガを紹介する異色ビジュアルブックだ。

 社会のホワイト化が進む中、海賊版というだけで眉をひそめる人も多いだろうが、実は海賊版マンガはそれぞれの国で、日本の人気コンテンツを共有するプラットフォーム的な役割を果たすとともに、日本マンガに対するリテラシーを育み、正規版マンガの流通を整える土壌を涵養するなどの役割を果たしてきたという。

 百聞は一見にしかず。ページを開くと懐かしく、そしてよく見ると、どこかに違和感がある、おなじみのキャラクターが次々と現れる。

 冒頭に登場するのは、中華圏で作られた海賊版マンガだ。

「超人之子」というタイトルのマンガは、ウルトラマンの海賊版コミカライズ。中華圏でのウルトラマンの知名度は非常に高く、海賊版も無数に存在するが、本作はその嚆矢となった作品だという。

 ウルトラマンのテレビ放映が日本で始まった2年後の1968年に刊行され、手掛けたのはのちに「香港マンガ界のゴッドファーザー」と呼ばれた大物マンガ家の黄玉郎氏だ。

 このほかにも、多くのウルトラマンマンガを紹介。中にはこの超人之子の「正規版」を名乗るパチモンや、孫悟空がウルトラマンに戦いを挑む作品、さらにバットマンとロビンに似たキャラがウルトラマンと競演する作品など、何でもありの世界だ。

 香港マンガにおいて、望月三起也と池上遼一の影響力は絶大で、黄玉郎をはじめとする香港の著名な漫画家は、彼らの作画スタイルを学び、香港武侠マンガに独自の進化をもたらしたという。

 そんな望月三起也の代表作のひとつ「ワイルド7」の海賊版「國際警騎七金龍(国際白バイ隊 ゴールドドラゴン7)」や、池上遼一「スパイダーマン」の海賊版「電光人・蜥蜴怪人(エレクトロ・リザード)」など、おなじみの作品から、同時代を過ごした人でも忘れてしまったか、覚えがないマイナー作品まで、多数を網羅。

 以降、「主人公の顔すげ替えマンガ」のひとつで、朝鮮戦争後の韓国を舞台にした韓国版「はだしのゲン」の「がんばれ、父ちゃん」など韓国作品から、タイで制作された「ドラえもん」の海賊版「ダイロモン」(表紙中央)、イタリアの「マジンガーZ」の海賊版コミカライズなど、445作品を収録。それぞれの作品についての解説から、その国の海賊版出版事情や歴史まで詳述した渾身作だ。

 2000年以降、新規に出版された海賊版マンガはほとんどなく、本書に収められた海賊版マンガはある意味で貴重なコレクションともいえる。

(パブリブ 3850円)

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