「冬雷」遠田潤子著

公開日: 更新日:

 日本海に面した小さな町、魚ノ宮。孤児だった代助が町の名家・千田家の養子になったのは11歳のとき。跡継ぎとしてようやく落ち着き場所を得たと思った代助だが、間もなくして義弟が生まれた。

 跡継ぎという地位はなくなったものの、千田家と代々深い関係のある鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人もでき、将来に希望を託していた代助に悪夢が訪れる。幼い義弟が行方不明になり、代助が犯人と疑われたのだ。

 町を出てから12年。行方不明だった義弟の遺体が見つかったという知らせを受け、代助は久しぶりに魚ノ宮を訪れるが、町の人たちはいまだに彼を疑っており、皆が白い目を向けてくる。唯一声をかけてきたのは、代助に失恋したといって自殺した愛美の兄・龍だ。自分を恨んでいるはずの龍がなぜ? 龍に愛美の遺書を見せられた代助は、あることに気づく……。

 因習的な町にまつわる伝説を基調に、孤独な青年の心情と失踪事件に秘められた謎とが交錯していく。著者の力量の程を知らしめる傑作。(東京創元社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

  2. 2
    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

  3. 3
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

  1. 6
    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  2. 7
    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

  3. 8
    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

  4. 9
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  5. 10
    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮

    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮