野地秩嘉
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野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第1回>訃報の日に甥からメール「伯父は厳しく優しかった」

公開日: 更新日:

 高倉はこう語っている。

「あれは仕事を通り越してました。(撮影している)3年の間、コマーシャルもやらなかったし、雑誌のインタビューにも出なかった。史実では弘前連隊の38人は11日間の予定が大暴風雪で延びて12日間の雪中行軍だったんですが、演じたほうの僕らは計185日間も雪のなかにいたんです。自衛隊は今でも八甲田山でその時期に雪中訓練をやっているんですが、昔と違って今は雪上車でダーッと山に登って、重油ストーブをばんばん燃やしてますから、Tシャツ一枚でやってますよ。ところが、僕らは明治時代の服装でロケやったでしょう。自衛隊の人たちが呆れて見てましたね」

 44歳から3年の間、雪が降ると酷寒の八甲田へ出かけていった。その間、一切、他の仕事はしていない。病気やケガを恐れて、願掛けすることにし、それまでに1日80本も吸っていたたばこをやめたのもこの時だった。エキストラのなかには一度、ロケに参加したけれど、あまりの寒さに耐えかねて、宿舎から逃亡した者も出たという。そんな厳しい環境の仕事だったが、高倉健は逃げなかった。この後も「南極物語」(1983年)で極地へ出かけ、「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)のロケでも厳寒の北海道に滞在した。

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