著者のコラム一覧
野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第9回>映画に出るか出ないかは「ホン」のひと言で決めた

公開日: 更新日:

 本人の言葉が「高倉健インタヴューズ」(プレジデント社)のなかに載っている。

「出演する映画を決めるにはまずホン(脚本)のなかに一言でもいいから、ゾクゾクッとくるセリフがあればやることにしています。ただ、『急いで読んでくれ』と頼まれても、それは無理です。ホンは体調を整えて真剣に読まないと、受ける印象が違ってしまいます」

 また、この作品は共演者に恵まれた映画だ。妻役の加藤登紀子は終始、抑制された演技を見せる。一方で、はじけた演技を見せるのが「喝采」などで知られる歌手のちあきなおみ。彼女の夫は高倉健が可愛がった俳優、郷鍈治(宍戸錠の実弟)だ。当初、ちあきは気乗りしなかったが、夫の郷が「健さんの映画だから」と勧めたために出演した。ちあきは1992年に夫を亡くし、以後、表舞台には出ていない。この映画のなかでは他の出演者を圧倒している。

 もうひとり、強烈な印象を残す役者がいる。美里英二。旅回りの役者だった美里を降旗監督が抜擢したものだ。

 美里がやる役は居酒屋兆治の常連で、カラオケ狂。造船所の工員なのだが、廃船をカラオケルームに改造し、夜な夜な女装しては歌をうたいまくる。

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