著者のコラム一覧
野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第16回>「勝新太郎と同じくらい、寝起きが悪いと言われた」

公開日: 更新日:

 高倉健勝新太郎については語ることはあったけれど、「無宿」についてはあまり触れなかった。高倉健にとって本作は自分が出た映画ではなく、勝新太郎の映画なのだろう。わたしが覚えている高倉健の言葉は次のようなものだ。

「『無宿』の現場では勝ちゃんがよく遅れてきたけれど、オレも遅刻していた。勝新太郎と同じくらい、寝起きが悪いと言われた」

 前述の通り、本作はなんといっても映像が美しい。鮮烈な映像が流れるように続いていく。ただ、高倉健自身は流れる映像ではなく、一枚の絵画を映画のなかに残したいと思っていたのではないだろうか。彼が出演し、しかも気に入っていた映画には、どこかに「絵画のようなカット」が含まれている。「あ・うん」における三木のり平との共演シーン、「鉄道員(ぽっぽや)」における雪のなか、ホームに立ち尽くす駅長……。一幅の絵ともいえる、静止画が彼の望みだったように思えてならない。

 傍証ではあるが、高倉健は絵が好きだった。ただし、たくさん集めていたわけではない。一枚の絵を毎日、眺めていた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃