著者のコラム一覧
野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第12回>「あの頃は一生懸命だった。ただ懸命に芝居をしていた」

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【飢餓海峡 1965年・東映】

 原作は水上勉。監督は巨匠・内田吐夢。映画化はこの一度だけだが、テレビドラマ、舞台などには何度も取り上げられている。

 主役は強盗殺人犯(三国連太郎)、彼を助ける娼婦(左幸子)、執念深く追いかける老刑事(伴淳三郎)の3人だ。高倉健扮する若い刑事はその3人を見つめながら演技をする。

 原作、映画ともに傑作である。そして、伴淳三郎、三国連太郎、左幸子の順に、演技が光る。この3人の映画といってもいい。なかでも伴淳三郎にとってはそれまでのコメディアンから正統派俳優に脱皮した記念碑的作品だった。

 この年、高倉健は34歳。「網走番外地」シリーズ、「日本侠客伝」シリーズ、「昭和残侠伝」第1作など10本に出演している。

 前年、東京オリンピックが成功裏に終わり、高度成長はこれ以降、ますます進化発展していく。「戦後」の空気が次第に薄れていくなかで、「飢餓海峡」は戦争直後の貧しい状況を思い起こさせる映画だった。

 高度成長が進み、庶民の自宅にはカラーテレビが設置されるようになっていったが、それでも日本映画はまだ人々の支持を集めていた。時代背景について、高倉健を慕う俳優、小林稔侍はこう語る。

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