碓井広義
著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

世界の広さ知る 「クレイジージャーニー」の徹底現物主義

公開日: 更新日:

【連載コラム「TV見るべきものは!!」】

「クレイジージャーニー」は、とんでもない人たちが、とんでもない世界をのぞかせてくれる、とんでもない番組である。異世界への案内人は危険地帯ジャーナリスト、洞窟探検家、マサイ戦士の日本人妻など、普段は会うこともない人たちだ。

 先週登場したのは写真家の伊藤大輔さん。ブラジルのリオデジャネイロにある「ファベーラ」と呼ばれるスラム街で暮らしている。ここはギャングの抗争が日常的に発生する危険地帯だ。

 ビデオカメラを持ったディレクターが1人で現地を訪れ、伊藤さんの写真撮影に同行する。それはまさに銃撃戦があった日の夜で、ピリピリした雰囲気のギャング4人がカメラの前に現れるのだが、見ているこちらも目が離せない。

 この番組のキモは徹底した現地・現物主義にある。めったに見られない光景や人物、どこかにあるかもしれない現実を実際に見せてくれるのだ。オーバーに言えば、世界の広さと深さに驚かされる。

 スタジオには松本人志バナナマン設楽統、そして小池栄子の3人がいて、当事者であるジャーニーから直接話を聞く。展開されるトークには、ジャーニーに対する尊敬の念があり、スタジオの自由闊達な雰囲気はジャズの即興演奏に近い。視聴者に伝えてくれるドキドキ感など、テレビの原点みたいなものがこの深夜番組にはあるのだ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異