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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

6人のキャラ差別化 「おそ松」ロスも生んだヒットの要因

公開日: 更新日:

おそ松さん」が終わってしまった。NHK朝ドラ「あさが来た」の終了も寂しいが、新作「とと姉ちゃん」への期待がある。しかし、「今度は何が飛び出すのか」というわくわく感の「おそ松さん」のロスは結構痛い。

「おそ松さん」は原作漫画はもちろん、60年代、80年代のアニメの単純な延長線上にはない、いわば“新製品”だ。勝因は、何といっても6人のキャラクターの差別化にある。原作での6つ子は、同じ人間が複数いることの面白さに終始しており、セット販売の扱いだった。

 ところが「おそ松さん」では、ニートという立場は同じでも、各人の個性が強調される。加えて、そのキャラを具現化する声優たちが皆、芸達者だったことも大きい。

 たとえば、ストーブの灯油が切れたのに、寒さを嫌って誰も灯油を買いに行こうとしない場面。こたつに入ったまま、頭の中のつぶやきが互いにぶつかり合う形で進行していくのだが、そのセリフといいテンポといい、爆笑モノだった。

 また、ダヨーンに吸い込まれたチョロ松が、外の世界で苦労するより体内にとどまろうとする場面。あえてチョロ松を拒み、送り返そうとするダヨーン族の娘が泣かせる。

 ブラックユーモア、下ネタ、時事ネタと貪欲に取り入れて笑わせ、時にはほろりとさせてくれた「おそ松さん」。ぜひ、シーズン2が見たい。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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