「青青といく」永井紗耶子著

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「青青といく」永井紗耶子著

 時は文化14(1817)年。京、黒谷にある老舗の京弓師の跡取り、16歳の堺屋弥兵衛は祖父や父に似ず、職人としての腕がまるでない。その一方で算盤勘定は得意で商いに面白さを感じていた。ある日、弥兵衛は「稽古談」に感銘を受け、作者で儒学者の海保清陵を訪ねる。「商いこそ世を救う経済だ」と力強く語り、「自由自在」に生きる道を示す青陵に教えを請いたいと弥兵衛は、足しげく通い出す。ところが間もなくして、青陵が亡くなった。元は江戸育ちで、各地に足を運んだという青陵。最後の弟子となった弥兵衛は、師の「遺灰は空にまけ」という遺言を胸に兄弟子の鐘成と共に、青陵の知己を訪ねる旅に出る。

 江戸の世に、日本中を歩いて諸藩や武士に商業の大切さを説いた儒学者・海保青陵の人生を、縁のあった人々の語りで紡ぐ歴史小説。

 己の思いを口にするたびに生じる周囲との軋轢、世の中を豊かにしたいという望み。人知れず抱いた後悔は別れた妻子のこと……。厳しい身分制度の中で「自由自在」を掲げて生きた青陵の、「理」だけでない情に厚い人柄にも心惹かれる。ラストに明かされる青陵の秘密も読みどころだ。

(KADOKAWA 2090円)

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