山本耕史「あの試合~3.11 再生のスタジアム~」は震災から人々が立ち上がる「再生のプロセス」を提示
3月6日、ドキュメンタリードラマ「あの試合~3.11 再生のスタジアム~」(NHK)が放送された。2011年に発生した「東日本大震災」をめぐる特番である。
物語の中心に置かれたのは、地震発生から43日後に行われたJリーグ再開初戦、川崎フロンターレ対ベガルタ仙台戦だ。被災地を足場とするチームの劇的な逆転勝利だった。しかし、番組が描くのは結果の美談ではない。当事者たちの揺れる心だ。
軸となる人物はベガルタの手倉森誠監督だ。クラブの存続危機。厳しい現実を目の当たりにして「サッカーをしていいのか」という迷い。それは選手やスタッフも同じ。ドキュメンタリー部分では事実経緯や証言を丁寧に積み重ねていく。
そしてドラマ部分では、山本耕史が手倉森と双子の弟・浩(元サッカー選手で指導者)の2役を演じた。兄弟の対話によって、複雑な心情や葛藤が見る側にも伝わってきた。被災した人たちの「希望の光」になろうという決意も、「言葉に出せば、願いじゃなく約束になる」と手倉森は言う。
震災から15年。近年は記憶の風化が語られ、特番も形式化していく傾向がある。危ういのは、震災を扱うこと自体が目的となる「形式疲労」だ。
そんな中で、この番組はサッカーの再開という象徴的な出来事を通じて、人々が徐々に立ち上がる「再生のプロセス」を見事に提示していた。



















