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スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。早大政治経済学部卒業後、博報堂に入社。在職中から音楽評論家として活動し、10冊超の著作を発表。2021年、55歳になったのを機に同社を早期退職。主な著書に「中森明菜の音楽1982-1991」「〈きゅんメロ〉の法則」「サブカルサラリーマンになろう」「大人のブルーハーツ」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた最新刊「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)が絶賛発売中。最新刊「日本ポップス史 1966-2023: あの音楽家の何がすごかったのか」が発売中。ラジオDJとしても活躍。

『アスク・ミー・ホワイ』「イングランドの森」に迷い込むような寂しさ

公開日: 更新日:

アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』(1963年3月22日発売)⑥

■『アスク・ミー・ホワイ』

 これもアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』収録曲ながら、アルバムに先んじて、1963年1月、シングル『プリーズ・プリーズ・ミー』のB面としてリリースされた曲。

 私をビートルズ沼に突き落とした曲である。

 81年、中3の私がシングル『プリーズ・プリーズ・ミー』を買った話はすでに書いたが、そのときA面よりもB面のこの曲の魅力にシビれたのだ。当時はまだ音楽理論などよく分かっていなかった。なので、ものすごく感覚的に、この曲の持つ不思議なムードのとりこになった。何というか「イングランドの森に迷い込んだ感じ」がしたのだ。そんな森、行ったことも見たこともないけれど。

 ただ今となっては、この曲の独特の魅力を理論的に説明できる。またコードの話で申し訳ない。歌い出し「♪アイ・ラブ【ユー・ーーー】」のところのコードがミソなのである。その名も「G#m7」。「ジー・シャープ・マイナー・セブンス」と読む。キーはEで、いきなりこのコードから始まる不思議さ。



 あえて形容すれば「イングランドの森」にそろりそろりと入っていくような寂しさ、切なさを感じて、シビれたのだ。

 そしてエンディング(再生時間「2:17」)でも、このコードが炸裂。最後の最後、また森の中に迷い込むような。

 いろいろ調べたら、天下の大作曲家、大指揮者、大ピアニストのレナード・バーンスタインが、この曲を激賞していたらしい。さすがレナちゃん、分かってらっしゃる!

■『ボーイズ』

 ボーカルはリンゴ。ビートルズのリードボーカルはやはりジョンとポールが多く、かなり差をつけられて次にジョージ。というわけでリンゴがメインを歌う曲はとても珍しい。その中でいちばん有名なのは『イエロー・サブマリン』だろう。

 これはカバー曲で、元々はアメリカの黒人女性コーラスグループ・シ(ュ)レルズのヒット曲『ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー』(60年)のB面曲。

『ウィル・ユー~』は作曲者のキャロル・キングのバージョンでも知られる有名曲なのだが、あえてB面に行くところが、さすが黒人音楽オタクのビートルズである。



 聴きどころは、リンゴのボーカルではなく、むしろリンゴをかき消すように「♪バッシュワッ・バッバッシュワ」とうなる残り3人の大声コーラス。特にポールによる、もっとも上のパート。

 録音直後、メンバー最年長のリンゴは3人にこう言ったという「うるせーよ!ボーイズ!」(嘘)。

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