罵声と灰皿と胃薬と 蜷川幸雄さん“強烈演出”の裏に深い愛

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■「ロミオとジュリエット」演出が転機

 1935年、埼玉県川口生まれ。開成高校卒業後、芸大受験に失敗し、劇団「青俳」に研究生として入団。当初は役者だったが68年に岡田英次、石橋蓮司らとともに「青俳」を脱退し、「現代人劇場」を結成。69年「真情あふるる軽薄さ」で演出家デビュー。72年に演劇集団「櫻社」を結成。

 74年に日生劇場で東宝の「ロミオとジュリエット」(主演は市川染五郎=現・松本幸四郎)を演出し、商業演劇の世界に身を投じたことがその後の人生を大きく変えた。

「政治の季節だった70年代初頭に演劇を通じて社会を変革しようとしていた蜷川氏でしたが、アングラの小劇場から娯楽性を求められる商業演劇へ垣根を越えて行ったことで当時は猛批判を浴びました。仲間は去り、『櫻社』も解散してしまう。ただ、蜷川氏は商業演劇の世界に飛び込んで興行的に大成功を収めた。これが演出家としての大きな転機となり、その後につながったのは間違いありません。余談ですが、政治活動とは距離を置いた劇作家の寺山修司とは反発して生前はほとんど没交渉でしたが、寺山の死後、寺山作品『身毒丸』を演出し、ヒットさせた。同時代に演劇活動をスタートさせた2人の不思議な因縁も感じます」(演劇ジャーナリスト・山田勝仁氏)

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