著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

追悼・加藤剛さん 70年代に憂いた正統派の二枚目俳優

公開日: 更新日:

 俳優の加藤剛さんが6月18日に亡くなった。享年80。正統的な二枚目俳優として、映画界でも確固とした地位を確立された方だった。とはいえ、俳優、とくに映画俳優としての加藤さんは不遇だった気がしないでもない。筆者は、ずっとそんな印象を抱いていた。

 加藤さんが主役を張る作品は1970年代が多かった。松本清張原作の「影の車」(70年)、「砂の器」(74年)や「黒の斜面」(71年)、「忍ぶ川」(72年)、主役ではない「戦争と人間」(70年)なども含めると、代表作の多くが70年代に並ぶ。ところが、その時代がくせものだった。

 70年代の日本映画界を席巻していた代表的な男優は、高倉健、菅原文太、緒形拳、原田芳雄、萩原健一、松田優作といったあたりか。男の匂いムンムン、ときに暴力の香りも充満させる男優ばかりだ。彼らには、この時代にみなぎる反体制的な気分が色濃かった。

 70年代は映画も観客も荒ぶる時代だ。そんな時代に、やわな二枚目はもてはやされなかった。正統的な二枚目の加藤さんは居心地が悪い思いをしていたのではないか。映画評論家たちの評価も、それほど高くなかったと思う。筆者も、その尻馬に乗った。

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