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大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

興収10億円を突破…是枝監督「万引き家族」が提示したもの

公開日: 更新日:

 カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」が大ヒットのスタートを切っている。12日には早くも興収10億円を突破した。邦画の実写作品としては今年最高の出だしだ。社会現象の一歩手前まで来ている。

 是枝裕和監督がゲスト出演した公開前の報道番組のキャスターは、こんなことを言っていた。普段事件を扱う場合、どうしても被害者のほうを向いた報道になりがちだ。本作を見て、犯罪者側にも目を向ける視点を持ちたいと。「万引き家族」のポイントが実にここなのだ。犯罪は、なぜ引き起こされるのか。

 マスコミが被害者のことを最優先に報道するのは当然だ。ただ、映画は虚構であるから、事件の背後関係や人間ドラマに立ち入って話を作ることができる。「万引き家族」は別段犯罪の背後関係を追っているわけではないが、万引などの犯罪行為が実に淡々とさりげなく描かれているのが特徴である。もっとも、被害を受けた者からすれば、その犯罪が淡々と行われたらたまったものではないが、映画はその部分には踏み込まない。本作で描かれる家族は実体のあるリアルな集合体ではなく、是枝監督が虚構の中で構築した疑似家族であるといっていいように感じた。

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