著者のコラム一覧
クロキタダユキ

トゥルーマン・ショー(1998年、米)

公開日: 更新日:

 平凡な青年トゥルーマンの日常は、24時間監視カメラで全世界にリアリティー番組として放映されていた。周囲は全て虚構で、生まれてから一度も巨大スタジオから外に出たことがない。それに気づくと、命懸けで外界への逃亡を画策する。

「スタジオ内で今まで通りに生活した方が安全だ」

 逃亡を翻意させようとしたプロデューサーにラスト、トゥルーマンが投げた言葉だ。

 昨年公開された「ザ・サークル」は、「いいね」欲しさに自分の24時間を世界に配信した若い女性の愚かさを描いたサスペンス。監視社会を痛烈に風刺したシナリオは似ているが、完成度は断然こちらが上だ。

 そのシナリオは、フィリップ・K・ディップの原作本のプロットを参考に作られたオリジナルでパンチが利いている。たとえば、晴天の空からなぜかライトが落ちてきたり、スタジオ内の生活を乗り切るため健康維持にビタミンDを知らずに摂取させられていたり。細かいところに工夫が施されているのだ。

 それに主演のジム・キャリーがハマり役だ。本作までコメディー一辺倒だったが、初めて挑んだシリアスな演技は見事というほかない。

 名匠ピーター・ウィアー監督の演出は静かに進むが、皮肉が利いていてどことなく不気味。もしも自分がトゥルーマンだったらと思うと、空恐ろしい。20年前に創造されたシニカルな世界観が現実になっているのだ。

【連載】セリフ1つ読む映画

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった