著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『ラヴ・ミー・ドゥ』は「はじめの一歩」からしてブルージーだった

公開日: 更新日:

アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』(1963年3月22日発売)④

■『ラヴ・ミー・ドゥ』

 ザ・ビートルズの記念すべきデビュー曲。1962年10月5日にイギリスで発売。日本では阪神と東映の日本シリーズが始まる寸前の頃。『プリーズ・プリーズ・ミー』もそうだったが、この曲の「顔」も、イントロのハーモニカだろう。

 デビューシングルとセカンドシングルで、ジョン・レノンは「世界でいちばん有名なハーモニカ奏者」となった。

 というハーモニカ・イントロをさらに細分化して、ハーモニカが奏でている、いちばん最初の音に注目したい。

 実音でFの音、キーがGなので、Gの音をド(主音)とすると、シ♭の音。細かい話はさておき、この音は、黒人音楽特有の「ブルーノート」と言われる音で、要するにジャズやブルース風の「ブルージー」な響きを持っている。



 言いたいことは、デビューシングルのイントロの最初の音、まさに「はじめの一歩」からして、ビートルズはブルージーだったということだ。

 リバプールの黒人音楽オタクの白人が大西洋をはさんだアメリカで生まれたさまざまな黒人音楽を世界中に紹介していくという歴史大河ドラマ「リバプール殿の4人」がここから始まる。

 さて、この曲(試聴リンク参照)のドラムスはリンゴではなく、アンディ・ホワイトというセッション・ドラマーによるものだ。

 当初のリンゴのバージョンも残っている(アルバム『パスト・マスターズvol.1』収録)。でもアンディ版に差し替えられたという。

 今聴き比べて「アンディ版の方が絶対いい」という感じは正直しない。ただリンゴ版のほうが、少々「いなたい」印象(妙な表現だがまさにそんな感じ)を受ける。

 それでもリンゴの叩く、重く、スイングしていて、つまりは「いなたい」ドラムスこそが、特に後期ビートルズでは、サウンドの核心を支えていくのだから面白い。



 あと、『プリーズ・プリーズ・ミー』の歌い出しもそうだったが、この曲の歌い出しも、上を歌うポール、下を歌うジョンとの音程幅が大きくて、少々こなれていない印象を受ける。

 まぁ「ハーモニー、とりあえずやってみた(それも演奏もしながら)」という感じなのだろうが。でも63年の秋には、ジョージも参加して、ビチッと煮詰まった三声コーラスを聴かせる『ジス・ボーイ』(こいつ)を発表するのだから、成長が早い早い。

 最後にタイトルの「ドゥ」は強調の意味。「愛してんか!」と大阪弁に訳しながら「ドゥ!」と村上ショージのマネをしていたのは約40年前の私。

■著者最新刊「日本ポップス史1966-2023~あの音楽家の何がすごかったのか」 絶賛発売中!Amazonでのお求めはこちらから

■好評連載「沢田研二の音楽1980-1985」をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)発売中!

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    萩本欽一〈46〉斉藤清六が泣きながら持ってきた1000万円、追い返そうと思って貯金額を聞いたら驚いた

  2. 2

    大苦戦「うたコン」がテレ東音楽祭と昭和歌謡に寄せて復活のノロシ! 矢沢永吉、井上陽水の名曲も次々と…

  3. 3

    中森明菜が完全復活 結果的に長期休養がその価値を上げたが、応えられるだけの資質を持っていた

  4. 4

    江角マキコさん「落書き騒動の真相」を初めて語る…人気YouTuberの配信に抗議

  5. 5

    《芸能界ってなぜ『在日』を隠すの?》…中村ゆりさんがルーツを胸に「負けん気」を貫いた44年の生涯

  1. 6

    テレ東「日本3大吞み食べドラマ」でも栗山千明「晩酌の流儀」に注目するワケ

  2. 7

    萩本欽一〈45〉斉藤清六を全国区にした誰も知らない裏話 “弟子入りNG”から評価を一転させたんです

  3. 8

    尾野真千子がNHK朝ドラ返り咲き! 沖縄と東京を行き来する「女優」と「女将」二刀流ワンダフルライフ

  4. 9

    Number_i「100億円プロジェクト」始動 矢沢永吉も壁にぶつかった世界進出がいよいよ現実に

  5. 10

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中森明菜が完全復活 結果的に長期休養がその価値を上げたが、応えられるだけの資質を持っていた

  2. 2

    萩本欽一〈46〉斉藤清六が泣きながら持ってきた1000万円、追い返そうと思って貯金額を聞いたら驚いた

  3. 3

    ドジャースは“大谷抜きポストシーズン”を想定か…指定席「1番・DH」に21歳デポーラ

  4. 4

    大苦戦「うたコン」がテレ東音楽祭と昭和歌謡に寄せて復活のノロシ! 矢沢永吉、井上陽水の名曲も次々と…

  5. 5

    日本ハム助っ人レイエスに「70万ドル請求訴訟」 タティスJr.も敗れた“収入10%契約”の落とし穴

  1. 6

    米長期金利ついに5%突破…いよいよ懸念される「アメリカ発の世界不況」

  2. 7

    巨人は逆転Vでも橋上監督代行の昇格「まずない」…阪神超え勝率でもこだわる“時代遅れの純血主義”

  3. 8

    『レボリューション』ではニッキー・ホプキンスのエレピソロに耳を澄ませてほしい

  4. 9

    阪神vs巨人《超低レベル》デッドヒートの行方と、虎V確率「80%」の根拠

  5. 10

    共産・田村智子氏の涙は「感情的」と批判続出、高市首相の涙演説はスルー…女性政治家の「涙」奇妙なダブスタ