俳優・彫刻家マルチな顔を持つ片桐仁が語る“平成オタク史”

公開日: 更新日:

 平成の30年間でヒットした商品や流行は数知れず。ひとつだけハッキリ言えるのは、平成はオタク文化が花開き、世界に羽ばたいた時代ということだ。お笑い芸人、俳優、彫刻家……と多彩な顔を持つ片桐仁(45)が「体験的平成オタク文化史」を大いに語る。

  ◇  ◇  ◇

 平成の幕開けはオタク受難の時代でした。元年に宮崎勤事件が起き、僕は高1で“オタク狩り”というか、中学時代はガンダムの話ばかりの友達が一切しなくなった。同級生に「おまえ、オタク?」と聞かれても、「違うよ」って全力で否定したりして。まだ「草食系男子」なんて言葉はなく、「リア充」以外は許されない時代でしたから。

 プラモデルも冬の時代でね。デザインが好きな「機動警察パトレイバー」のメカはプラモ化されない。海洋堂のガレージキットはあったけど、高くて買えない。自作しようとホビージャパンを読むと、手をパテで作るとか書いてあって、できっこないんです。

 初めて「オタク」と呼ばれたのは、高1の夏休み。東京・浜松町の産業貿易センターで「ワンダーフェスティバル」という今も続くガレージキットの即売会が開かれ、親には予備校に行くと嘘をついて出かけた。そこで出展ディーラーのお兄さんに「オタク、レイバー好き?」と言われたんです。オタクの人は本当に相手を「オタク」って呼ぶんだな、と。

■ターニングポイントは平成7年

 美大進学後は「アート」の名を借りて、「セーラームーン」や「ときめきメモリアル」など美少女フィギュアを作りまくった。そうこうしているうちに、平成7年秋に「新世紀エヴァンゲリオン」のテレビシリーズが始まりました。

 その頃から僕はフリーターモードに入り、芸人活動を始めたんですけど。友達の先輩で、すごいオタクの人がCMをカットし、高画質の「S―VHS」でエヴァを録画していた。ダビングしがてら見ると、これが面白くって。1年後には社会現象になっていた。

 衝撃的なストーリーの謎や解釈を語る本がたくさん出て。インターネットの普及前、オタクがつながる場所として、文章でアニメを語るのがはやった。とにかく情報に飢えていたんです。

「STUDIO VOICE」や「Quick Japan」など、とがった雑誌が、庵野秀明監督の何万字ものロングインタビューを掲載。論客たちが独自の視点でエヴァを語り、それを読んだオタクがあたかも自分の知識のように語ったりしてね。

 サブカルチャーのど真ん中にエヴァが入り込み、「オタク」と呼ばれたくなくて隠れていた人たちが、元に戻って「俺も好きだ」と言い始めた。


■「ダサい」が「オシャレ」に大逆転

 同じ頃にアメコミやスター・ウォーズのフィギュアもはやり、裏原宿のスケーターファッションの店に置かれ出した。「オタク=ダサい」からオシャレに逆転したんです。

 今やオシャレな人がアニメ柄のTシャツを平気で着ています。ブランドとコラボしたり。

「ジョジョ」のTシャツなんて2万円とかしましたから。僕もいったん、家に帰って悩みました。結局、買いましたけどね。

 エヴァの放送と同じ平成7年には、バンダイがガンプラの「MG」(マスターグレード)シリーズを発売。3年後に「PG」(パーフェクトグレード)シリーズが出た。関節にアクチュエーターというピストンがあり、産業機械感が最高でね。当時は下北沢で風呂なしの一人暮らし。家賃2万7000円なのにPGの塗装のため、7万円もするエアコンプレッサーを買って、一点豪華主義を満喫していました。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    あの細木数子をメロメロにさせて手玉に…キックボクサー魔裟斗のシタタカさ

  2. 2

    『SHOGUN 将軍』シーズン2撮影中の榎木孝明さん「世界的な時代劇映画のプロデュースに関わりたい」

  3. 3

    故・中山美穂さんの遺産めぐる「相続トラブル」報道の実相…ひとり息子の相続放棄で、確執の実母に権利移行か

  4. 4

    和久田麻由子アナがかわいそう…元NHKエースアナを次々使い潰す日テレの困った“体質”

  5. 5

    犯人探しはまだまだ続く? 中山功太案件“解決”で強まる「パンサー尾形の件は誰なの?」の疑問

  1. 6

    年内休養の小泉今日子に「思想強すぎ」のヤジ相次ぐもファンは平静 武道館での“憲法9条騒動”も通常運転の範囲内

  2. 7

    タモリ騒動で見えたキンコン西野の“本当の評判”と、とろサーモン久保田、永野…"嫌われ芸人"らの意外な素顔

  3. 8

    サバンナ高橋“10年いじめ”問題からにじむ上下関係の悪しき伝統と「吉本の闇」…鬼越トマホーク良ちゃんも参戦

  4. 9

    由紀さおり79歳・安田祥子84歳が語る「健康の秘訣」 姉妹での童謡コンサートは今年で40年

  5. 10

    坂東彌十郎は変幻自在に3つのドラマに出演 掛け持ちする俳優は片手間なのではなくて芸達者

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人・戸郷翔征トレード獲得に他球団が虎視眈々 「ウチなら再生できる」「環境を変えた方がいい」

  2. 2

    「投手の墓場」で好投する菅野智之の価値 僕が日本人史上2人目の本塁打を打ったのもクアーズフィールド

  3. 3

    細木数子と闘った作家・溝口敦氏は『地獄に堕ちるわよ』をどう見たか? “女ヤクザ”の手口と正体

  4. 4

    磐越道バス事故で問われる運行会社と学校の罪と賠償責任…「数億円規模になるのでは」と弁護士が見解

  5. 5

    巨人にFA松本剛は必要だったのか…批判殺到する本人よりも「責められるべき人間がいる」と他球団関係者

  1. 6

    あの細木数子をメロメロにさせて手玉に…キックボクサー魔裟斗のシタタカさ

  2. 7

    倉田保昭さん80歳でも現役のアクション俳優「ストレッチが一番大事。おかげで痛いところはありません」

  3. 8

    渋野日向子×テレ東イケメンアナ“お泊り愛”の行方…女子プロは「体に変化が出る」とも

  4. 9

    衆院選「中傷動画」問題で高市首相「秘書を信じる!」超強気答弁が“命取り”に…追及ネタ再投下される恐れ

  5. 10

    サバンナ高橋“10年いじめ”問題の波紋…NHKは「番組出演は変更なし」と回答もイメージダウン不可避