著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

震災から8年…避難先の皆さん、たまには映画で気晴らしを

公開日: 更新日:

 東日本大震災から8年経ったが、誰も心の痛みと絶望感は決して消えるものではない。被災地の人々だけでない。我ら、東京に住む人間の心も晴れやしない。福島の原発が水素爆発したニュース映像を見せられた時、鳥肌立って恐怖にかられ、どこに逃亡したらいいのか、パニックになったのを思い出す。今でも壊れたままの原子炉内部はどうなんだ? 安心など出来るわけがない。しかし、政府と東京都だけがオリンピック開催に躍起になって「おもてなし」の支度に追われて浮かれている。ふざけやがって。たった何週間かの祭りより、被災地のためにすることがあるだろうが。

 避難したままの人たちがまだ5万人以上いる。危険極まりない所になど帰れやしないのだ。そんな人たちのせめて気晴らしになればと思い、面白い映画を並べてみた。実はこれらは数年前から「関西ウォーカー」の連載で取り上げてきた「井筒和幸監督の昔の映画は良かったなぁ。」の映画群だ。今月いっぱいで連載が終わってしまうので紹介したい。しばし、時を忘れられるなら本望です。

 中2の時に目に焼きついた「ブルー・マックス」は複葉機の空中戦。マイアミのキューバ移民ギャング「スカーフェイス」はアル・パチーノ全力投球。「ザ・ドライバー」のライアン・オニールのカーチェイスは圧巻。「バルジ大作戦」は生まれて初めての70ミリ3時間超大作。「フレンチ・コネクション2」はポパイ刑事がフランスに乗りこんで麻薬王と死闘。「ゲッタウェイ」は言わずと知れたカッコ良過ぎのマックイーンの逃亡劇。最も面白い邦画は「飢餓海峡」。デ・ニーロがモヒカン頭で現れた「タクシードライバー」は何十回見ても酔える。ベトナム帰還兵の「ローリング・サンダー」はハードボイルド復讐劇。戦争スパイアクション「荒鷲の要塞」の若きC・イーストウッド。「突破口!」は映画の神ドン・シーゲル監督の銀行ギャングもの。黒人刑事対白人署長の「夜の大捜査線」。伝説のゲテモノホラー「遊星からの物体X」。J・ニコルソンの逸品は「さらば冬のかもめ」。「真夜中のカーボーイ」はダスティン・ホフマンの名演。「ブリット」もマックイーンがムスタングGTで爆走。「史上最大の作戦」は問答無用の戦争巨編。「ゴッドファーザー」を知らない人は不幸だ。「ロンゲスト・ヤード」は娯楽の王道。ペキンパーの「わらの犬」もヤバい。「バリー・リンドン」はキューブリックのリアリズム時代劇。「デリンジャー」は愛しのギャングたち。緒形拳の「復讐するは我にあり」。ブニュエルの傑作「自由の幻想」、「現金に手を出すな」は仏製ヤクザ映画の傑作。やっぱり「ダーティハリー」かな。「グッドフェローズ」もマフィア最高!

 避難先の皆さん、たまには映画で気晴らしを。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です

  4. 4

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  2. 7

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  3. 8

    Snow Manの強みは抜群のスタイルと、それでも“高みを目指す”チャレンジ精神

  4. 9

    小室眞子さん最新写真に「オーラがない」と驚き広がる…「皇族に見えない」と指摘するファンの残念

  5. 10

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か