著者のコラム一覧
本橋信宏作家

1956年、埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。私小説的手法による庶民史をライフワークとしている。バブル焼け跡派と自称。執筆はノンフィクション・小説・エッセー・評論まで幅広い。2019年、「全裸監督」(太田出版/新潮文庫)が、山田孝之主演でNetflixで映像化配信され大きな話題に。最新刊に「花街アンダーグラウンド」(駒草出版)などがある。

「世界のクロサワ」の看板で渋る堀江しのぶの両親を説得

公開日: 更新日:

 堀江しのぶと両親も野田に運命を託してみることにした。

 黒沢久雄という世界のクロサワの長男と公私にわたりつきあってきた野田であったが、黒沢明監督にはこんな親しみを感じていた。

「黒沢明監督の家には何回もお邪魔しました。“どうしてるの今日?”とか黒沢監督から電話がかかってくるんだから。家で麻雀するのが大好きで、僕がよく呼ばれたんですよ。(黒沢)久雄とか一緒にいなくても、勝手に冷蔵庫開けてご飯食べさせてもらって、麻雀打ってた。黒沢監督の麻雀? 普通の学生麻雀ですよ(笑い)。黒沢監督が何か手をつくってるなと思ったら、“はい1000点”って安い手で上がっちゃう。そしたら怒るのよ(笑い)。真剣になるからさ。麻雀終わったら、貧乏だった僕らが食べたことのないようなご飯を食べさせてくれるわけですよ。黒沢さんの奥さんが」

 黒沢夫人からは「映画の話だけは絶対にしないように」と言われていた。黒沢明にとって家庭はくつろげる空間であり、本業の話題を振られると、つい本気になって収拾がつかなくなるからだった。

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