著者のコラム一覧
本橋信宏作家

1956年、埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。私小説的手法による庶民史をライフワークとしている。バブル焼け跡派と自称。執筆はノンフィクション・小説・エッセー・評論まで幅広い。2019年、「全裸監督 村西とおる伝」(太田出版)が、山田孝之主演でNetflixで映像化配信され大きな話題に。最新刊に、「東京降りたことのない駅」(大洋図書)、「全裸編集部」(双葉社)などがある

「世界のクロサワ」の看板で渋る堀江しのぶの両親を説得

公開日: 更新日:

 ある日、テレビ画面から映画「八甲田山」(高倉健、北大路欣也主演/橋本忍脚本/森谷司郎監督 東宝・1977年)が流れていた。吹雪の遭難シーン。画面が白く埋まる。黒沢明がぽつりと言った。

「ああ、僕これ撮れない」

 野田は「え、なんですか?」と尋ねた。

「吹雪の中じゃキャメラが回らないよ。無理だよ」

 極寒において当時の機材ではバッテリーが上がってしまいカメラが回らなくなるおそれがあった。映画は真実に近いシーンをさまざまなテクニックで構築していく芸術である。だが本物志向の黒沢にはすべて実際の猛吹雪でなければならないのだろう。

 野田は、若い女性に対して面接でも平気で「何本食った?」と男性体験を聞き出すずうずうしさがある。ずばり核心に切り込む野田のきわどい質問は、“野田砲”とも呼ばれる。

 黒沢監督が「八甲田山」を見ていたときにも、この野田砲が炸裂した。

「(黒沢)監督はロケのとき、あの電柱が邪魔だ、あの家が邪魔だとか助監督に言って、どかしてしまうっていう噂がありますけど、それって本当なんですか?」

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  2. 2

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 3

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  4. 4

    市船橋(千葉)海上監督に聞く「高校完全無償化で公立校の受難はますます加速しませんか?」

  5. 5

    綾瀬はるか3年ぶり主演ドラマ「ひとりでしにたい」“不発”で迎えた曲がり角…女優として今後どうする?

  1. 6

    プロ志望の健大高崎・佐藤龍月が左肘手術経てカムバック「下位指名でものし上がる覚悟」

  2. 7

    中山美穂「香典トラブル」で図らずも露呈した「妹・忍」をめぐる“芸能界のドンの圧力”

  3. 8

    石破首相が「企業・団体献金」見直しで豹変したウラ…独断で立憲との協議に自民党内から反発

  4. 9

    長渕剛がイベント会社に破産申し立て…相次ぐ不運とトラブル相手の元女優アカウント削除で心配な近況

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希“ゴリ押し”ローテ復帰が生む火種…弾き出される投手は堪ったもんじゃない