「夜の蝶」京マチ子と山本富士子が火花バチバチの名演技

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1957年 吉村公三郎監督

 田中澄江が脚本を担当。ホステス紹介業の秀二(船越英二)を狂言回しにした水商売の裏物語だ。

 銀座でバー「フランソワ」を経営するマリ(京マチ子)は内心穏やかでなかった。舞子上がりのおきく(山本富士子)が京都から進出してきたからだ。実は7年前、マリの夫がおきくを愛人にし、マリはその浮気現場に踏み込んだ過去があった。ホステスやママ連中が注視する中、おきくの店はオープンする。

 フランソワは各界の実力者が足しげく通う店。そこには東京への出店を狙う関西系百貨店の白沢社長(山村聰)やその取り巻き、政治家らの姿がある。白沢は政治家を抱き込んだつもりだったが、身内の裏切りで計画が頓挫。おきくは資金援助している若き医学研究者の原田(芥川比呂志)との結婚を夢みているが……。

 華やかな銀座を舞台に、夜の蝶たちが男とカネをめぐって争うドロドロの愛憎劇だ。京マチ子と山本富士子は弁舌あざやか。2人の滑らかなセリフ回しで物語が小気味よく進行する。特に山本がうまい。マリは宿敵のおきくに辛辣な皮肉を連射する。当時の世界情勢ではないが、女たちの「東西冷戦」は緊迫感十分だ。おきくが原田に真意を告げられる雨の夜の情景も心に残る。

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