著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

天下のわがまま活動屋たちが暴れていた時代が懐かしい

公開日: 更新日:

 今週のNHK―BSの番組「アナザーストーリーズ」は「天才激突!『影武者』・黒澤明VS勝新太郎! 突然の主役降板の真相」というふれ込みだった。かれこれ40年も前の邦画界の珍事件だ。どんな知られざる舞台裏だったのかとちょいと期待した。当時の2人は共にいわく付きだった。アヘン所持かで送検されたばかりの天下のスター勝新と、巨匠と言われながらも長年大してオモロイ作品が作れずにくすぶっていた黒澤が初めて対決する戦国絵巻の準備中に実につまらないことで喧嘩別れしてしまったのだ。

 リハ中に、自分の演技のさまをビデオで撮って家でもっと勉強して本番に臨みたいというけなげな勝新に対し、そんなことはさせない、現場に監督は2人も要らないんだからと言い張り、勝新をクビにしてしまったのが黒澤。撮影に入る前に本当に対決してしまい、仲代達矢に主役交代になった。勝新と仲代じゃ比べようがない。セリフを言い続けながらカレーライスをペロリと平らげてしまう勝新と、目をむきっ放しの仲代じゃ演技がまるで違う。当時、ニュースで知った途端、我らは「何やねん、そんなガキみたいなことで終わりかよ。だったらもう見んとくわ」と気が抜けていた。勝新が主演してたなら世界中でヒットして、その後、ハワイでパンツに大麻やコカインなんか隠し持つ暇もないほどの世界スターになってたかもしれない。わがままな映画の虫2人が傑作を生むチャンスを潰し合ってしまった。だが、番組自体はアナザーな真相が語られたのでもなく、取り巻きのこれといった証言もなく、期待外れだった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手