トミーズ十番勝負の舞台裏…健のために6時間の伝言ラリー
トミーズの巻(下)
前回、生き残りをかけた「トミーズ十番勝負」が結果的に成功し、その後の礎を築くことができたことを書きましたが、この企画がスタートするには背景がありました。
雅君は健ちゃんにガツガツとした意欲が感じられないと不満を募らせ(実はよくあるコンビの揉め事ですが)真剣に解散を考えていたのです。それを知った、なんば花月の担当者が仲裁に入り「新喜劇の後に時間をつくるからやってみて、それでダメなら解散しましょ」と提案したのです。
まずはお互い腹を割って話そうと機会を設けたのですが……雅君が「もっとしっかりやれよ」「おもろいこと考えろや」と矢継ぎ早に言葉が出るのに対し、幼なじみからの主従関係がある健ちゃんはモジモジして言いたいことが言えない。そこで私が「健ちゃん、雅に言いたいことを俺に言うて。それを雅に伝えるから」と、目の前に相方がいるにもかかわらず、私が聞いて、雅君に伝えるという、コントのような伝言ラリーが6時間続きました。
全部吐き出し、これまでの漫才の形を一回壊してゼロから始めることになり、単純に「雅・ボケ、健・ツッコミ」「健・ボケ、雅・ツッコミ」「健に物知りのキャラクター付けをする」等々、10本全部パターンを変えてやることを決めました。ところが、いざネタを作り出すと月に2本の新作なのでインターバルが2週間しかなく、全部変えるのは到底追いつかない。5本目あたりから一番お客さんの反応が良かった「雅・ボケ、健・ツッコミ」パターンを基本にしてネタ作りを進めていきました。