一雫ライオンの長編小説「二人の嘘」が重版出来!「完璧な女性の転落物語。でも…」

公開日: 更新日:

 作家・一雫ライオンの最新小説「二人の嘘」が評判になっている。6月下旬に発売になるやたちまち重版出来。出版界の名物編集者で幻冬舎の見城徹社長もSNSで「ぐいぐいと小説世界に引き込まれる。小説を読む快感を久しぶりに味わっている」と絶賛している。

 主人公は「十年に一人の逸材」といわれる美貌の女性判事、片陵礼子。そして礼子が懲役刑に処した元服役囚の蛭間隆也。交わることのない2人の運命が交錯した時、悲劇が始まる――。

 読んで圧倒されるのはその描写力だ。法廷内、裁判官の日常、礼子が住む荻窪の街並み、人間関係の襞……。家庭では完璧な妻を演じる礼子が蛭間と出会うことで封印していた感情をどんどん揺さぶられる。

「担当編集と話す中で、女性判事を主人公にしようと決めました。完璧な女性が不倫でどんどん転落していくという物語です。裁判の傍聴もしましたし、元裁判官や弁護士にも話を聞いて参考にしました。裁判官は一体どこにいるんですか? って聞くと、普通にカバンを抱えて丸ノ内線に乗って霞が関まで通勤しているとか(笑い)。慣行としてマイカーは持たないとか知らないことばかりでしたが、自身が裁判官であることを公にはできないし、テレビのニュースや週刊誌を見聞きすることで自身の感情に流されることを避けるために外部の情報を遮断することもあるなど、厳しく自分を律していることも知りました」

不倫が似合う金沢の街

 物語は終盤、北陸・金沢へとその舞台を移す。礼子の複雑な生い立ち、逃避行を重ねる2人の結末は……。

「金沢の人には怒られるかもしれませんが、とにかく色っぽい街で大人の恋、不倫が似合うんです(笑い)。今のご時世は不倫というだけで断罪されてしまいます。でも、許されない恋だからこそ純愛だと思うんです」

 構想5年、執筆2年。「担当編集の“うまい小説ではなく、すごい小説を預かりたい”という言葉に応えるために書きました」という「二人の嘘」。小説を読むのは久しぶりという大人にこそおすすめ。忘れていた五感が甦る極上の時間を保証する。

▽ひとしずく・らいおん 作家。1973年、東京都生まれ。明治大学政治経済学部2部中退。俳優活動を経て、35歳のときに演劇ユニット「東京深夜舞台」結成を機に脚本家に転身。主な脚本作品に、映画「TAP 完全なる飼育」「サブイボマスク」、東野圭吾原作「パラレルワールド・ラブストーリー」など。2017年に家族愛を描いた「ダー・天使」(集英社)で小説家デビューし、翌年「スノーマン」を出版。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  3. 3

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  4. 4

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  5. 5

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  1. 6

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 9

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  5. 10

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 4

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  5. 5

    狭まる維新包囲網…関西で「国保逃れ」追及の動き加速、年明けには永田町にも飛び火確実

  1. 6

    和久田麻由子アナNHK退職で桑子真帆アナ一強体制確立! 「フリー化」封印し局内で出世街道爆走へ

  2. 7

    松田聖子は「45周年」でも露出激減のナゾと現在地 26日にオールナイトニッポンGOLD出演で注目

  3. 8

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  4. 9

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 10

    実業家でタレントの宮崎麗果に脱税報道 妻と“成り金アピール”元EXILEの黒木啓司の現在と今後