1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士（政策研究）。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。
杉咲花主演 「恋です！～ヤンキー君と白杖ガール～」は注目の新世代型“パラドラマ”
先週から始まった「恋です！～ヤンキー君と白杖ガール～」（日本テレビ系）。ヒロインのユキコ（杉咲花）は視覚障害者だが全盲ではない。光と色がぼんやりわかる、弱視の盲学校生だ。
ハンディは抱えているが、ポジティブで明るい性格のユキコ。見ていてつらくなるタイプではない。むしろ杉咲の好演もあって、障害も大事な「個性」なのだと思えてくる。
恋の相手となるのはヤンキーの森生（杉野遥亮）だが、これまた実に「いいヤツ」なのだ。分厚いラブレターを渡したものの、ユキコは細かい字が読めないと知ると、今度は便箋いっぱいに、「恋です！」の巨大な文字を書いてきた。
障害者のドラマと聞けば、身構えてしまう人も少なくないかもしれない。だが、これはラブコメの一本として普通に楽しむのが正しい見方だろう。
もう一つ、このドラマの特色が「解説コーナー」という奇策だ。ドラマの途中、盲目の漫談家・濱田祐太郎が案内人として登場し、視覚障害をめぐる豆知識を語るのだ。実体験をベースにした、「視覚は五感の王者」といった話が新鮮だった。大胆な手法と演出だが、ユキコたちを理解するのに役立ちそうだ。
過去において、「障害のあるヒロイン」のドラマは何本もあった。しかし、ここまで“湿り気”の少ない作風は珍しい。新世代型「パラドラマ」の試みとして注目だ。
