著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

五木ひろしの光と影<25>野口修は「『夜空』でいける。短期決戦だ」とはねつけた

公開日: 更新日:

 曲はそのまま「夜空」と名付けられた。

「ブルー・シャトウ」(1967年3月15日発売・ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)、「シクラメンのかほり」(1975年4月10日発売・布施明)、「魅せられて」(1979年2月25日発売・ジュディ・オング)、「ルビーの指環」(1981年2月5日発売・寺尾聰)、「北酒場」(1982年3月21日発売・細川たかし)、「ミ・アモーレ」(1985年3月8日発売・中森明菜)……過去のレコ大受賞曲を見るとある法則に気付く。その多くが上半期にリリースされていることだ。すなわち「一年を通してのロングヒット」が受賞に不可分と見られていた証左かもしれない。しかし、夏の終わりに、平尾昌晃が軽井沢の星空を見ながら作った「夜空」が、徳間音工からリリースされたのは1973年10月20日。従来の基準で言えば来年度の候補曲にエントリーされてもいいくらいである。事実、1965年の大賞曲「柔」(美空ひばり)や76年の大賞曲「北の宿から」(都はるみ)など前年リリース曲が翌年の大賞に選ばれる例は枚挙にいとまがない。


 であるのに、野口修は「『夜空』を候補曲にする」と強弁した。徳間音工のスタッフも関係者も、野口プロのスタッフまでほとんどが反対した。7月にリリースした「ふるさと」がじわじわとセールスを伸ばしていたのもあった。そうでなくても年末年始は帰省の季節である。世間の空気と合致しやすい。有線の反響も悪くない。にもかかわらず野口は「いや『夜空』だ。『夜空』でいける。絶対これでいける。短期決戦だ」とはねつけた。

 野口修には勝算があった。そこには別の理由もあったのである。 =つづく

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参政党・梅村みずほ議員の“怖すぎる”言論弾圧…「西麻布の母」名乗るX匿名アカに訴訟チラつかせ口封じ

  2. 2

    二階堂ふみと電撃婚したカズレーザーの超個性派言行録…「頑張らない」をモットーに年間200冊を読破

  3. 3

    選挙3連敗でも「#辞めるな」拡大…石破政権に自民党9月人事&内閣改造で政権延命のウルトラC

  4. 4

    11歳差、バイセクシュアルを公言…二階堂ふみがカズレーザーにベタ惚れした理由

  5. 5

    最速158キロ健大高崎・石垣元気を独占直撃!「最も関心があるプロ球団はどこですか?」

  1. 6

    日本ハム中田翔「暴力事件」一部始終とその深層 後輩投手の顔面にこうして拳を振り上げた

  2. 7

    「デビルマン」(全4巻)永井豪作

  3. 8

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  4. 9

    広陵・中井監督が語っていた「部員は全員家族」…今となっては“ブーメラン”な指導方針と哲学の数々

  5. 10

    キンプリ永瀬廉が大阪学芸高から日出高校に転校することになった家庭事情 大学は明治学院に進学