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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

高橋一生「インビジブル」柴咲コウともに新境地、オリジナル脚本への期待が高まる

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 連続ドラマは初回が勝負だ。その初回も第1ブロックが決め手となる。どんな人物たちによる、どんな物語なのかを、魅力的に提示しなければならないからだ。その意味で、15日にスタートした「インビジブル」(TBS系)は見事だった。

 冒頭はビルの屋上に立つキリコ(柴咲コウ)だ。渋谷駅前の交差点。路地で男をぶん殴る刑事の志村(高橋一生)。彼が容疑者を追って駅前に来た瞬間、いきなり大爆発。ビルのデジタル画面での犯行声明。その中で名指しされる志村。キリコの顔。志村の顔。そしてタイトルが出た。

 ここまでが約7分。スピード感のある展開で興味をかき立てた後は、「犯罪コーディネーター」だというキリコの独壇場だ。志村も捜査陣もそして見る側もキリコに翻弄されていく。

 駅前テロの真相をめぐって、キリコが志村に語りかける。

「あたしのいる裏の世界からあなたのいる表の世界をのぞくと、ふだん見えない悪がうっすらと透けて見えることがあるんだよ」

 このドラマの核心ともいえるいいセリフだ。いずみ吉紘(日曜劇場「集団左遷!!」など)のオリジナル脚本への期待が高まる。

 犯罪者を憎むあまり暴走も辞さない刑事が、意外なほど似合う高橋。キリコという一筋縄ではいかない犯罪者を、きっちりと造形する柴咲。どちらも新境地であり、見えない火花が散っている。

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