著者のコラム一覧
北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

ゼレンスキー大統領の「文化外交」手腕 情報戦略のプロが“刮目ポイント”を解説

公開日: 更新日:

 5月14日に伊トリノで開催された音楽祭「ユーロビジョン」でウクライナ代表の「カルシュ・オーケストラ」が優勝した。ユーロビジョンは推定視聴者約2億人を誇る欧州最大の音楽祭。これまでにABBAやセリーヌ・ディオン、最近では世界的にブレーク中の伊ロックバンド「マネスキン」(8月来日予定)を輩出した。

 今年の優勝曲「ステファニア」はウクライナ民謡とヒップホップを融合させ母の愛をラップで歌い上げる独特の楽曲。その公式ミュージックビデオが凄まじい。戦禍の中で女の子を抱き抱えた女性兵士が母親を捜し、無事に届けた後に戦場に引き返すシーンは、世界を震撼(しんかん)させた「虐殺の地」ブチャやイルピン等の現地で撮影されたホンモノだ。ビデオに映る、思わず目を覆いたくなるような廃虚は紛れもないウクライナの「今」なのである。この迫力を前にして我々は呆然とするしかないだろう。

 カルシュ・オーケストラは演奏後、マリウポリとアゾフスタリ製鉄所への支援を呼びかけ「ウクライナに栄光あれ!(スラーヴァ・ウクライニ!)」と叫び、視聴者投票で圧倒的な支持を集めて逆転優勝を果たした。ゼレンスキー大統領は「我々の音楽は欧州を制覇した」と称賛、長期化する侵略戦争下で欧州市民が差し伸べる支援の手が音楽シーンを席巻した形だ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    「汽車を待つ君の横で時計を気にした駅」は一体どこなのか?

  2. 2

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  3. 3

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  4. 4

    国分太一は人権救済求め「窮状」を訴えるが…5億円自宅に土地、推定年収2億円超の“勝ち組セレブ”ぶりも明らかに

  5. 5

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  1. 6

    “裸の王様”と化した三谷幸喜…フジテレビが社運を懸けたドラマが大コケ危機

  2. 7

    森下千里氏が「環境大臣政務官」に“スピード出世”! 今井絵理子氏、生稲晃子氏ら先輩タレント議員を脅かす議員内序列と評判

  3. 8

    人権救済を申し立てた国分太一を横目に…元TOKIOリーダー城島茂が始めていた“通販ビジネス”

  4. 9

    大食いタレント高橋ちなりさん死去…元フードファイターが明かした壮絶な摂食障害告白ブログが話題

  5. 10

    菅田将暉「もしがく」不発の元凶はフジテレビの“保守路線”…豪華キャスト&主題歌も昭和感ゼロで逆効果

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々